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ミステリ感想-『ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人

2016年12月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
80年代、画期的な技術によって生み出された飛行船ジェリーフィッシュ。
その最新型の飛行試験中に6人の科学者達が死亡。
雪深き山中に墜落した単純な事故死かと思われたが、中からは首や手足を切断された遺体が見つかる。

2016年鮎川哲也賞、このミス10位、文春5位、本ミス3位


~感想~
デビュー作ながら各ランキングで上位に入り今年の台風の目となった話題作。
「21世紀のそして誰もいなくなった」をうたっているが、事件渦中の飛行船内を描くパートと、事件後の捜査を描く警察パートに分かれて交互に進んでいく形式は、デビュー作でシリーズ第一弾ということもあり「21世紀の十角館の殺人」と呼んだ方がしっくり来る。
警察パートで刻々と明かされていく情報の出し方が絶妙で、飛行船内の事件の進行とあいまって、謎が深まっていく手法も上手い。
トリックも光るが特に伏線が豊富で、一部に専門的な知識が必要なものも含まれているが、いずれも作中ではっきりと手掛かりを書いているフェアプレイぶり。
一方フェアに過ぎ、まだデビュー作とあって書き慣れていないせいか犯人がモロバレ状態なのはご愛嬌。
犯行経緯もあまりにも犯人に都合よく事が進みすぎるきらいはあるが、それでも探偵役が犯人に浴びせる「たった一つの質問」もインパクト抜群で、ラストシーンも印象深い。
欠点は多々あるが、この作者なら巻を重ねていくごとに解消していくだろうと確信させるに足る、評判に違わぬ良作である。


16.12.15
評価:★★★☆ 7
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