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ミステリ感想-『ムカシXムカシ』森博嗣

2016年12月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
資産家の老夫婦が殺された邸宅。
さらに河童が出るという言い伝えの残る古井戸で死体が見つかり、遺された美術品の鑑定を行っていた小川と真鍋に新規採用の永田が、いつものように事件に首を突っ込む。
Xシリーズ第四弾。


~感想~
基本的に動機が無いのが森ミステリィだが、今回は動機だけあって他がなんにも無いという異例の構成。
どのくらいなんにも無いのかは実際に読んで確かめてもらうとして、その動機も異常ではあるが意外性はあまり無く、ただジャンルをミステリィからサイコホラーに転換させるだけのものに過ぎない。
また新規加入の永田さんがある意味で犯人よりいろいろとやべえ人なので、サイコ成分も薄まってしまっているが、小川&真鍋だけでも面白い会話に新たなスパイスが加わり、その方面では楽しませてくれる。
中盤まで驚くほどミステリミステリした展開だったのに、終わってみればいつもの末期森博嗣ながら、Gシリーズを挟んで戻ってくると、やはりXシリーズの(会話の)楽しさは格別で、我々のような駄目な読者はだいたい許せてしまう。
あの緻密な構成と論理展開に、時々かます大胆な物理トリックや叙述トリックが魅力的だった森ミステリィを、今や石崎幸二と同じ楽しみ方をしているのはどうかとも思うが。


16.12.20
評価:★★ 4
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