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ミステリ感想-『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』倉知淳

2018年04月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
第二次世界大戦末期、とある研究所で密かに開発が進められる新型爆弾。
その実験に携わる新兵が密室で撲殺される。周囲に凶器は無く、代わりに粉々になった豆腐が散らばっていた……表題作。

他5編を収録した短編集。


~感想~
まだまだあった単行本未収録の中・短編を収めた作品集。
以前は数年に一冊しか出ていなかったのに、こうも毎年のように刊行されていると、倉知は寡作や筆が遅いわけではなく、単にまとめてくれる出版社がなかなか見つからなかっただけではないかと思えてならない。

2011~2017年の間に書かれた作品で、猫丸先輩シリーズから非ミステリのSFまでと幅広く集められているが、いずれも可もなく不可もなくといったところで、目立った良作も駄作も無い。

それぞれ簡単に紹介すると「変奏曲・ABCの殺人」はミステリ風味の、「社内偏愛」はSF風味の世にも奇妙な物語めいた作品。
「薬味と甘味の殺人現場」は「口にネギを突っ込まれ、枕元にケーキを供えられた死体」という魅力的な謎が、いわゆる狂人の論理で解かれるのが少し残念ながら、解決で終わればよいところを間延びした着地をするのがなんともはや。
「夜を見る猫」も「三日三晩、夜中にじっと壁を見る猫」という日常の謎に意外な真相を付けるのはいいが、猫を可愛がるパートと解決編の説明が冗長に過ぎる。が、これはいちゃもんというものだろう。

あらすじを書いた表題作は逆に解決パートが電光石火の早業で好感が持て、「猫丸先輩の出張」は完全無欠の密室なのに例によって誰も密室と言い出さないのが微笑ましく、単純なトリックで不可能状況を構成し、オチも綺麗に決まった佳作だが、状況説明が下手すぎて無駄にページ数を食っているのがネック。
「猫丸先輩シリーズのように短くすれば見栄えが変わる」と言い続けてきたが、そのシリーズでもこんなに冗長になってしまうとは。

ともあれ各短編の質は一定以上あるので、ファンなら読んで損はしないだろう。


18.4.20
評価:★★☆ 5
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