~あらすじ~
画廊の息子で美術部員の緑川礼は、傘を貸した縁で知り合った千坂桜にずば抜けた絵の才能を見出す。
だが変わり者の彼女は絵だけではなく、礼の周囲で起こる数々の事件にも推理の才能を見せる。
2017年本格ミステリ大賞候補
~感想~
シリーズ作品以外は粗製乱ぞ…いまいち好みではないので見逃していたが、本格ミステリ大賞候補と聞いてあわてて読んだ。なんだ、シリーズ作品外でも面白いの書けるんじゃないか。
連作短編集のお手本のような構成で、序盤は伊神さんシリーズ(市立シリーズ)の葉山くんと設定がかぶりすぎている(ほぼ唯一の美術部員・モテモテ・片親・世話好き・ワトスン兼ツッコミ等々)語り手のせいで個性が死んでいたが、後半になるにつれキャラ立ちしていき、しかも高校卒業後も描かれるため葉山くんの後日談のようになっていく。結局葉山くんなのか。
ミステリとして個々の短編の質はむしろ伊神さんシリーズより上で、しかもそこに真相解明のヒントとして有名絵画が絡められ、コミュ障の探偵に代わり頭良すぎのワトスンが通訳する役割も珍しく、連作形式にふさわしい大仕掛けも有りと、他の単発作品とは一線を画す出来栄えを誇る。
また他のシリーズとの際立った違いを上げると、やはりボーイ・ミーツ・ガールというか恋愛要素の強さと、シリーズ作品ではめったに進まない作中時間の大幅な経過が特色で、しかもその双方が単なる演出や物語性の強化ではなく、トリックそのものにも関わってくるのだから素晴らしい。
本ミス大賞候補と聞くと、不作の年で相手に恵まれたのだろうか、他の4作と比べ圧倒的に無名なこれを推したのは話題作りではなかろうか、とか様々な疑問は湧くものの、作者の得意とする連作短編集の中でも当たりの部類であることは間違いなく、ファンなら必読と言ってもいいくらいの良作だと断言できる。
願わくはこれで名が売れて、伊神さんシリーズに脚光が浴びせられ、漫画化アニメ化その他を望みたい。どうせ無いだろうけど。
18.4.11
評価:★★★★ 8
画廊の息子で美術部員の緑川礼は、傘を貸した縁で知り合った千坂桜にずば抜けた絵の才能を見出す。
だが変わり者の彼女は絵だけではなく、礼の周囲で起こる数々の事件にも推理の才能を見せる。
2017年本格ミステリ大賞候補
~感想~
シリーズ作品以外は粗製乱ぞ…いまいち好みではないので見逃していたが、本格ミステリ大賞候補と聞いてあわてて読んだ。なんだ、シリーズ作品外でも面白いの書けるんじゃないか。
連作短編集のお手本のような構成で、序盤は伊神さんシリーズ(市立シリーズ)の葉山くんと設定がかぶりすぎている(ほぼ唯一の美術部員・モテモテ・片親・世話好き・ワトスン兼ツッコミ等々)語り手のせいで個性が死んでいたが、後半になるにつれキャラ立ちしていき、しかも高校卒業後も描かれるため葉山くんの後日談のようになっていく。結局葉山くんなのか。
ミステリとして個々の短編の質はむしろ伊神さんシリーズより上で、しかもそこに真相解明のヒントとして有名絵画が絡められ、コミュ障の探偵に代わり頭良すぎのワトスンが通訳する役割も珍しく、連作形式にふさわしい大仕掛けも有りと、他の単発作品とは一線を画す出来栄えを誇る。
また他のシリーズとの際立った違いを上げると、やはりボーイ・ミーツ・ガールというか恋愛要素の強さと、シリーズ作品ではめったに進まない作中時間の大幅な経過が特色で、しかもその双方が単なる演出や物語性の強化ではなく、トリックそのものにも関わってくるのだから素晴らしい。
本ミス大賞候補と聞くと、不作の年で相手に恵まれたのだろうか、他の4作と比べ圧倒的に無名なこれを推したのは話題作りではなかろうか、とか様々な疑問は湧くものの、作者の得意とする連作短編集の中でも当たりの部類であることは間違いなく、ファンなら必読と言ってもいいくらいの良作だと断言できる。
願わくはこれで名が売れて、伊神さんシリーズに脚光が浴びせられ、漫画化アニメ化その他を望みたい。どうせ無いだろうけど。
18.4.11
評価:★★★★ 8