~あらすじ~
不祥事により捜査一課から犯罪資料館へ左遷された寺田聡。
赤い博物館と呼ばれる資料館の館長で、雪女めいたキャリア警視の緋色冴子は、資料をもとに未解決事件の捜査を彼に命じる。
2015年このミス19位、本ミス6位、本格ミステリ大賞候補
~感想~
事件の概要はいずれも地味で、トリック自体も既視感たっぷり。ひとつ使い方を誤れば食傷気味に感じてしまうところ、とんでもない発想の飛躍を武器に一点突破し、キレッキレの真相に着地する粒揃いの短編集。
マイベストは2編目の「復讐日記」で、完全無欠に終息しているはずのある復讐の記録を、構図の反転により全てを引っくり返してしまう年間ベスト級の傑作。
「パンの身代金」は無数に書かれた誘拐ミステリで、しかも手垢の付いたトリックなのに、そうとは全く気付かせない手練手管と豊富な伏線に度肝を抜かれる。
「死が共犯者を別つまで」はありきたりな交換殺人で、一部アンフェアではないかという記述もあるにはあるが、手掛かりはあからさまな形で最初から転がっていながらやはり気付けない。
「炎」も一から十まで終わっているはずの事件を、これまたおなじみのトリックでしかないのに伏線の山と発想の逆転で、見たことあるけど思いもよらない真相へとたどり着く。
ラストの「死に至る問い」は急にどうした!?と聞きたくなる連城三紀彦的な転倒した論理にちょっとついていけない面もあるが、それだけ意外性は十分。
最後の最後には続編作る気満々です!と言わんばかりの発言も飛び出し、是が非でも書いていただきたいし期待せざるを得ない。
面白いことは面白いが、かなり粗い所や偶然に頼りすぎな感もあった「密室蒐集家」から、視点を一つ変えることで驚異的な飛躍を遂げた、ひょっとすると作者が一皮むけた瞬間を見られたのかもしれない、とまで思わせる傑作である。
18.4.3
評価:★★★★ 8
不祥事により捜査一課から犯罪資料館へ左遷された寺田聡。
赤い博物館と呼ばれる資料館の館長で、雪女めいたキャリア警視の緋色冴子は、資料をもとに未解決事件の捜査を彼に命じる。
2015年このミス19位、本ミス6位、本格ミステリ大賞候補
~感想~
事件の概要はいずれも地味で、トリック自体も既視感たっぷり。ひとつ使い方を誤れば食傷気味に感じてしまうところ、とんでもない発想の飛躍を武器に一点突破し、キレッキレの真相に着地する粒揃いの短編集。
マイベストは2編目の「復讐日記」で、完全無欠に終息しているはずのある復讐の記録を、構図の反転により全てを引っくり返してしまう年間ベスト級の傑作。
「パンの身代金」は無数に書かれた誘拐ミステリで、しかも手垢の付いたトリックなのに、そうとは全く気付かせない手練手管と豊富な伏線に度肝を抜かれる。
「死が共犯者を別つまで」はありきたりな交換殺人で、一部アンフェアではないかという記述もあるにはあるが、手掛かりはあからさまな形で最初から転がっていながらやはり気付けない。
「炎」も一から十まで終わっているはずの事件を、これまたおなじみのトリックでしかないのに伏線の山と発想の逆転で、見たことあるけど思いもよらない真相へとたどり着く。
ラストの「死に至る問い」は急にどうした!?と聞きたくなる連城三紀彦的な転倒した論理にちょっとついていけない面もあるが、それだけ意外性は十分。
最後の最後には続編作る気満々です!と言わんばかりの発言も飛び出し、是が非でも書いていただきたいし期待せざるを得ない。
面白いことは面白いが、かなり粗い所や偶然に頼りすぎな感もあった「密室蒐集家」から、視点を一つ変えることで驚異的な飛躍を遂げた、ひょっとすると作者が一皮むけた瞬間を見られたのかもしれない、とまで思わせる傑作である。
18.4.3
評価:★★★★ 8