小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『メイン・ディッシュ』北森鴻

2010年03月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
小劇団「紅神楽」を主宰する紅林ユリエの同居人ミケさんは料理の達人にして名探偵。どんなに難しい事件でも、とびきりの料理を作りながら、見事に解決してくれる。でも、そんなミケさん自身にも、誰にも明かせない秘密が……。
99年本格ミステリベスト10・7位


~感想~
先ごろ著者が急逝されたので追悼代わりに読んだのだが……これは口にあわず。
単に相性の問題なのだが、平易な文体なのに読みづらい作家というのがいるもので、ところどころ意味がつかめないこともしばしば。カタカナの語尾や(~だヨ)心の声(アア、私ハソウ思ウ)も大いに苦手である。
短編ひとつひとつの質は飛び抜けたものはないものの悪くはないが、全てをつなげる連作短編集としての姿勢に疑問があり、
(↓ネタバレ↓)
人物入れ替わりトリックなのだが、入れ替わった二人がともに作中で別の人物として登場しており、そこでは別の名前を使っていた理由が「かわいがってくれた叔父が死んで以来、いつの間にか叔父の名を名乗るようになっていた」はあんまりすぎるではないか。読んでいたのが電車内でなければ投げ捨てていたことは間違いない。
この一点だけでも評価を落とすには十分であり、どうしようもない結末と無くてもいいようなボーナストラックとあいまって、総じて(僕にとっては)読む価値のない一冊になってしまった。


10.3.17
評価:★ 2
コメント

ミステリ感想-『返事はいらない』宮部みゆき

2010年03月17日 | ミステリ感想
~収録作品~
返事はいらない
ドルシネアにようこそ
言わずにおいて
聞こえていますか
裏切らないで
私はついてない


~感想~
今さら言うまでもない安定した質の高さで、それぞれに趣向を凝らした作品ばかり。
出色は日常からあれよあれよという間にとんでもない方向に物語がすっ飛んでいく『言わずにおいて』だろう。
他にも傑作長編『火車』の原型となった『裏切らないで』や、本書中では唯一のユーモア仕立ての『私はついてない』もいい出来具合。
東京への恨み節が各編に共通していて、それだけが少々うるさいが、粒ぞろいの一冊である。


10.3.3
評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『扼殺のロンド』小島正樹

2010年03月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
工場の壁にぶつかり、ドアが開かなくなった事故車。中には腹を裂かれた女と、無傷で死んだ男。直前にすれ違ったドライバーは二人とも生きていたと証言し、さらに男の驚くべき死因が判明して捜査は混迷を深めた。さらに第二、第三の密室事件が追い打ちをかけ……。


~感想~
やりすぎな作風で知られる作者だが、今作では冒頭の事故車の二重密室を核に据え、矢継ぎ早な解決は控えどっしりと構えてみせた。
しかし章が新たまるごとに完全無欠の密室事件が起き、興味を引きつけるのは流石。トリックも数を絞っただけはあり、どの密室も奇想と意外性に満ち、しかも密室を解くことで他の密室の謎を解くヒントとしても機能するという無駄の無い構成が光る。
白眉はメインの事故車の密室で、とんでもないトリックで驚かせてくれる。ネタバレを避けながら触れると、並の作家ならば「腹を裂かれた女」の謎だけで満足するところに、その謎と密接に絡み合った「無傷で死んだ男」を用意する(あるいは用意できることに気づく)のが、この作者が並ではないことを示している。
あとはインパクトのある探偵役さえ作れればいつでもブレイクできるだろうが……。


10.3.8
評価:★★★★ 8
コメント

映画感想―『放送禁止2 ある呪われた大家族』

2010年03月14日 | 映画感想

~あらすじ~
ごく普通の大家族に、怪我や事故が相次ぐという奇妙な出来事が起こる。謎めいた心霊写真がすべての原因と考えられるが……。


~感想~
前作の真相にたどりついた視聴者(笑)が思ったよりも少なかったため、難易度を落として制作した第二弾。
なんでも8割の視聴者(爆)が真相を見抜けるように作ったそうなのだが、もう馬鹿にしているとしか思えないほどわかりやすい仕様で、わかりやすいどころかラストシーンで不自然極まりないカットで真相そのものを明示しているのだが、これで8割とは視聴者(核爆)をなめすぎではなかろうか。
……と言ってみたものの、ここからは余談になるが、以前にmixiニュースで、いいともにも出演していた書道家の森先生がブログで、読者から投稿された習字に朱を入れるという企画をやっていたのだが、そこに悪戯で別の著名な書道家の作品を投稿したバカがおり、森先生は気づかずに朱を入れてダメ出ししてしまった……というものが紹介されたのだが、その記事に対するコメントのおよそ8割が「同じ書道家の作品を批判するなんて酷い」という全く的はずれなもので、一般層の読解力のなさに唖然とさせられたものだが、もしかしてこの作品の真相にたどりつけるのも(こんだけわかりやすくしているにも関わらず)本当に8割なのかもしれない、と思ったり。

あ、作品自体の感想としては、糞ほどわかりやす過ぎて、もうシリーズを追う意欲もなくしてしまったが、豊富な伏線と過剰な演出はなかなか面白かった。
ラストの答え合わせさえなければ、随分印象は変わったと思う。


評価:★★ 4
コメント

映画感想―『放送禁止』

2010年03月13日 | 映画感想

~あらすじ~
幽霊が出ると噂の廃ビルに侵入した大学生4人だが、突然ひとりがいなくなったことに気づく。残された3人もひとりまたひとりと失踪し……。


~感想~
本作はフジテレビ深夜枠で、フェイク・ドキュメンタリーとして放送され、真相を明示しない破格の構成で話題を呼んだドラマである。
以前に紹介した『ノロイ』とは異なり、番組の最後にフィクションだと断っているものの、一般的な注意力を持たない視聴者から問い合わせが殺到したそうだが、問い合わせるまでもなく、演技も展開も見るからにドラマ的で、真相も期待していたような意外性はなく、普通に観ていれば普通に気づくようなレベルである。
ただし真相につながる伏線はなかなか豊富で、鑑賞後に検証サイトを調べると、改めて確かめたくなることだろう。1時間にも満たない短尺の作品なので、一見の価値はあるかも。


評価:★★☆ 5
コメント

映画感想―『G.I.ジョー』

2010年03月11日 | 映画感想

~あらすじ~
あらゆる金属を食い尽くす化学物質ナノマイトが邪悪なテロ組織コブラに強奪された。その輸送任務に就いていた兵士のデュークは、最強の国際機密部隊“G.I.ジョー”に入隊して、コブラとの対決に臨む。


~感想~
これはアクション映画の傑作じゃないか?
世界初のフィギュアが原作の映画と聞いて危ぶんでいたが、自分とこの作品には愛があふれているアメリカ国民の手によるだけはあり、アクションにアクションをたたみかける、もうその手のファンしか眼中に無いような構成で、だれる場面がない。
CGはさすがに『トランスフォーマーリベンジ』と比べると若干落ちるものの、十分なクオリティを保ち、見せ方もうまい。
「東京」と明記されているのに明らかに中国の街角で、しかもみんな中国語で話す少林寺っぽい道場という確信犯的に誤った日本描写もあるのはご愛嬌だが、アクション映画好きは見逃してはいけない、隠れた傑作である。


評価:★★★★☆ 9
コメント

映画感想―『トランスフォーマーリベンジ』

2010年03月10日 | 映画感想

~あらすじ~
前作から2年、大学生活を送るサムは「キューブ」の破片に触れたことから、奇妙なサインが見えるようになる。それは、古代ピラミッドに秘められた、ある恐るべき暗号を示していた。
一方その頃、絶滅したはずの邪悪なトランスフォーマー・ディセプティコンの生き残りが、無数の仲間を率いて世界各地に侵入を始めるのだった。


~感想~
前作はシリーズの開始ということもあり設定の描写に多くの分量を割き、トランスフォーマーも少数に絞ったため、前半はとにかくだれてしょうがなかったが、今作では「前回あれだけ説明したからもういいよね?」と言わんばかりに、冒頭から問答無用でトランスフォーマー同士が肉弾戦をくり広げる展開で、非常にテンポが良い。
もちろん途中でバカ一家(でも主人公)のどうでもいいドタバタ喜劇が挟まれるのはマイケル・ベイクオリティだが、ベイは自分の長所も短所もよく把握しているようで、シーン一つ一つを切り取って見れば、ツッコミ所が無数にあるのだが、ツッコむ暇を与えないくらいに次々と激しいアクションシーンが、新たなツッコミ所と肩を並べてやってくるので、息つく暇も与えない。
漫画界には同様の作風(?)として、ゆでたまごという御大がいるが、ゆで曰く「先々までストーリーを考えず、その時にこうなったら一番面白い展開を描く」そうだが、マイケル・ベイこそはまさに映画界のゆでたまごである。
ラジー賞の作品部門を受賞したが、それもベイとしては本望だろう。
深い描写なんぞは他人に任せ、外見だけやたらとかっこいい、IQの低い映画をこれからもベイには撮っていって欲しいものだ。


評価:★★★★ 8
コメント

映画感想―『イレイザー』

2010年03月09日 | 映画感想

~あらすじ~
大手武器製造会社のOLリーは、政府と会社が癒着し最新兵器「レールガン」を密売する陰謀を知ってしまったことから、命を狙われるはめに。
重要証人の過去を消し去りながら、その命を護る政府特別情報局員“イレイザー”のクルーガーは、リーを護衛する任を受けるのだが……。


~感想~
ジャケ写と勝手なイメージからバカSFだと思っていたら、バカになるのは終盤だけで、意外に手堅い作りのよくできた映画だった。
「レールガン」というトンデモ要素を差っ引けばそもそもSFでもなく、若干のサスペンスと爽快なアクションに、アメリカンな笑いをちりばめた、まぎれもない娯楽作品である。ごめんよ知事。


評価:★★★★ 8
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 9』加藤元浩

2010年03月07日 | マンガ感想
「ゲームの規則」★★★☆ 7
~あらすじ~
さる大富豪が企画したゲーム。勝者には莫大な財産が、敗者には永遠の沈黙が与えられる。
可奈に強引に参加させられた燈馬は、誰も勝利したことの無いゲームに挑む。

~感想~
単純なゲームに心理パズルを沿え、オチには意外な結末を用意した一編。
凡百の作家ならばゲームの必勝法だけで終えるところに、この作者は様々な趣向を凝らすのである。


「凍てつく鉄槌」★★★★★ 10
~あらすじ~
30年前に閉じられたきりの勝鬨橋の中からミイラが発見された。
しかしミイラがしていた腕時計は25年前に作られた物で……。

~感想~
大傑作。このマンガに少しでも興味があるならば、まずこの一編だけでも読んで欲しい。
魅力的な謎から挑発的な犯人の登場、過去の因縁が絡み合い、冒頭のミイラの謎が解け、全てに決着がついたと思った瞬間。
とんでもない仕掛けが死角から忽然と現れる。ミステリマンガというくくりだけではなく、本格ミステリとして年間ベスト級の短編である。
コメント

マンガ感想-『Q.E.D. 証明終了 8』加藤元浩

2010年03月06日 | マンガ感想
「フォーリング・ダウン」★★ 4
~あらすじ~
吊り橋の下で墜落死体で発見された消防士。しかし動機のある青年は高所恐怖症で現場に近づくことすらできなかった。

~感想~
マンガでやってこそのトリック。登場人物を絞りすぎて意外性は薄く、展開もベッタベタですこし物足りないか。


「学園祭狂想曲」★★☆ 5
~あらすじ~
学園祭の前日、各部の展示場が荒らされた。しかし嫌がらせをする動機を持つ部は残らずアリバイを持っていた。

~感想~
ドラマで先に観てしまい、燈馬くんのあまりのオーラの無さにあてられて呆然としたまま終わってしまい、ほとんど印象に残っていない。
改めて見直すと、細かいトリックを随所に凝らした、実に『Q.E.D.』らしい短編である。
コメント