東方のあけぼの

政治、経済、外交、社会現象に付いての観察

維新後最大の国賊(2)

2007-06-26 08:11:51 | 社会・経済

は誰であろうが。まず頭に浮かぶのは西郷隆盛である。日本歴史最後の内戦である西南戦争の首魁である。靖国神社にも祀られていない。しかし、彼は私の遠縁なんだよね。そういうことで扱いにくい。パスする。

そこでだ。明治維新の大業を烏有に帰せしめた昭和軍閥の台頭を許した珍書「南国太平記」の著者である直木三十五を指名する。今回のテーマは直木賞を廃止せよ、だ。この結論に持っていくには相当な腕力を必要とする。うまくいきましたら拍手喝采をたまわりますよう。

書誌:

南国太平記は昭和5年6月12日から6年10月16日まで「大阪毎日新聞」と「東京日日新聞」に連載された小説である。好評につき連載中の昭和6年4月に単行本として前編が、同年6月に中篇が誠文堂から出版された。後編は連載が完結した翌月には出版された。後編は番町書房からだそうだ。前中編と後編で出版社が違うのはどういうわけかな。印税の取り分ででももめたのかな。

解題:

種本は大正3年に雑誌「日本および日本人」に三田村鳶魚が発表した「島津家お油羅騒動」である。情報源は元島津藩士加治木常樹である(聞き書き)。さらにその元は幕末に島津久光の反対派西郷隆盛らが流布した政治パンフレットであると思われる。

内容は昭和天皇后の実家薩摩島津家のお家騒動を島津斉彬側、西郷隆盛側から描いている。現代にたとえれば昭和天皇后の美智子さまの実家を悪し様にののしるエログロ扇情小説である。雅子皇太子妃の実家のことを面白おかしく暴露する悪意に満ちた小説である。現代であれば市井の一個人であろうと直ちに名誉毀損、損害賠償の裁判をおこされるであろう。

昭和初期というのは面白い時代である。こういう小説が大新聞に一年半に渡って連載された時代である。しかも連載中にはやくも好評につき単行本が出るという盛況であった。そして爆発的な売れ行きからか、出版社で版権の奪い合いとなる。今からは想像も出来ない。今ではスキャンダルが売りの週刊誌でもこんな小説は連載できないだろう。

このような当時の世相は永井荷風の日記を読むとよく分かる。それが満州事変、515、226など一連の軍クーデター騒ぎでガラッと暗転する。

以下次号