せっかくノーベル平和賞をも貰ったのに、オバマはアフガニスタンへ大量の兵士を送ることを決 めた。3万人以上の増派は、民生部門への肩入れも行うようであるが、タリバンの全土的な復権と、カルザイ大統領の不人気のアフガン増派は、結局は徒労に終わるであろう。
オバマは選挙期間中から、イラク撤退とアフガン増兵を掲げていた。アフガン国民は、アメリカ兵もISAF軍(国連軍・実質EU軍)も区別するわけではなく、攻撃を加えている。外国兵への無差別攻撃で、80年代ソ連が手ひどい敗北を味わっている。彼らは外国兵が、何をやってくれるかを見ているのではない。タリバンはもうすでに政府機関内にも浸透していると言われている。
タリバンは兵士を雇用する資金調達を、麻薬と隣国のパキスタンから恒常的に受けている。彼らの目的は鮮明で士気も高い。これに比べて、アメリカ兵もISAF兵も厭戦的になっていると言われている。戦争の目的も判然としないばかりか勝利の見通しも薄いからである。
米議会調査局によると、アフガン派兵戦士の1年間の経費は100万ドルを超えるそうである。ほぼ1億円である。3万人以上を増派すると400億ドルの経費がかかることになる。すでにアフガン増派反対が40%台になっているアメリカが、その負担増を容認するであろうか。
アフガンへの深入りは、パキスタンとも対峙することになる。政局が不安定な核保有国パキスタンを取り込みたたいオバマは何処かで手を打たなければらなくなる。オバマの増派をパキスタンは表向きと異なり、歓迎はしていない。
増派後のオバマのとるべき道は二つしかない。一つは撤退へのスケジュールの表明である。いわゆる出口戦略として、期限を設けることである。もう一つは、カルザイではなくタリバンと話し合うことである。穏健なタリバンを選ぶことはできない。本気でタリバンと交渉することである。連立でも何でも構わないから、タリバンをとりこまなければアフガンは収拾がつかなくなる。
ブッシュの遺産を引き継いだ同情はあるものの、今回の増派はノーベル平和賞受賞したばかりの人物のやるべきことではない。