とても怖ろしい本に出会いました。「密約 日米地位協定と米軍犯罪」吉田敏浩著、毎日新聞社刊である。本書は法律を勉強したことのないものにとっては、やや苦痛の文章であり、難解な全体のつくりである。
鳩山内閣が発足するや、岡田外相は密約問題を取り上げた。先頃それは一応の決着を見ている。少々おかしな結論を引き出しているが、それはそれで構わないと思われる。自民党政権の嘘がはっきりしたことで評価したい。
しかし、岡田が明らかにしたのは核兵器を搭載した艦船の事前協議、朝鮮半島の有事では日本の基地を自由に使える、沖縄返還後も自由に核兵器を持ちこめる、沖縄返還の土地の原状回復を日本がやるという、4つの密約である。
しかし、著者の吉田氏が本書で取り上げるのが、日米地位協定の密約である。この不平等条約がある限り、米軍兵による犯罪はなくならない。地位協定は表の顔を持ちながらも、運用に関して歴代の政府は、アメリカの言われるままに不平等条約を呑んできた。
かつては、野党の改進党であった、中曽根康弘ですら「安政和親条約以下の不平等条約である」と吉田首相に詰め寄っている。その後首相になり、日本はアメリカの不沈空母となる、とまで言った中曽根の発言である。
「重要な事件に関する以外は、一義的に裁判権はアメリカが持つ」とする、アメリカの意向は、時が経つにつれて拡大化していく。米兵の犯罪に何の抑止効果もなく、犯罪は減ることはない。重要な事件の判断も、結局はアメリカが決めることになる。少女強姦事件のように、世論が大きく騒ぐ時だけ、アメリカが譲るのである。些細な事件はやり放題で、何のお咎めもない。
密約に係わる文書の公開は、外務省や法務省の官僚にことごとく断られて、著者は怒りを隠さない。米兵による犯罪被害者の怒りも大きい。裁判はもちろん捜査することもなく犯人は帰国する。
民主党政権は、日米地位協定の密約も白日のもとに晒すべきである。
左フォトアルバム<熊野古道を歩いてきました>をアップしました。