現在中国では、第11期全人代が開催されている。退任する温家宝首相は、これまでの経済成長の成果を高く評価した。演説の70%はそれらに使われたが、さすがに来年の経済成長は抑えて、7.5%とした。残りの時間は、申し訳程度に治安と環境と国民生活に充てられた。
然し、経済成長を大きく上回るのが、軍事予算の伸びである。実質25年間は、毎年10%以上の伸び、今や世界第2位の軍事大国となっている。その予算も不透明で公表されている数字でこの程度である。経済の伸びが鈍化するため、国民の不満を軍事拡大で補おうとする腹づもりである。とりわけ海軍力の拡大は、驚異的でもある。
中国の抱える問題は、いずれも深刻で幅広く、根本的な問題が多い。簡単に列挙しててみるだけで以下のようである。
●環境問題 PM2.5が騒がれている。国境を越えて周辺国家に影響を及ぼしている。がん村という、公害をまともに受けている村が数百か所あることを、政府は先ごろ認めた。住民の半数がガンになるというのである。
●人権問題 チベットでは今でも宗教弾圧に対する抗議の焼身自殺が絶えない。ウイグルなどの独立運動は、言論統制と武力弾圧で抑え込まれている。以前にも書いたが、司法を通さない投獄する労働矯正制度は、言論弾圧と人権蹂躙である。
●汚職問題 一党独裁がもたらす利権の構図は、汚職の根源である。汚職者と摘
発者が同一であるため、内部改革は不可能である。日本の原子力ムラの国家版である。
●格差問題 経済成長は都市周辺と巨大産業だけの問題である。富めるものから富むとする、権力者の勝手な論理は、自ら標榜する社会主義国家とは無関係である。数億円の収入があるものから、その日暮らしのものまで、天文学的格差問題は、農村問題や人権問題と合わせて深刻である。
●情報開示 中国はネットからも情報を締め出している。中国独自のネット網をもち、強く情報管理をしている。更には、世界各国への国家的サイバー攻撃も行っている。情報管理は、”アラブの春”を教訓としてさらに深化している。
●民主主義問題 格差問題や人権問題と重複するが、国民に情報を制限し権利を奪う制度となっている、現行の共産党一党独裁は全ての悪弊の根源でもある。
その他高齢化問題や、知的財産権問題などもある。習近平・李克強体制がこれらのすべてが、深刻と思われる問題をどれほど解決へ向かわすことができるのであろうか。