物忘れが激しい日本人である。昨年暮れの選挙のことすら覚えていないのか。自民党は大勝した。自民党の7割の候補者が、TPP参加反対を唱えていた。『聖域なき云々』というような、あいまいな表現はほとんど使われてはいなかった。
当選後のどのTPP反対集会にも、過半数を上回る国会議員が参加していた。安倍首相の、参加表明直後の集会にも、8割を超える国会議員が反対を表明していた。
選挙前には、民主党の野田がTPP参加と消費税を公認の条件とした。その後は、民主党らしくいい加減な対応になったが、少なくとも鳩山には踏絵として引退させた。TPP賛成の民主党と、反対の自民党というような構図にあった。
決められない政治が長く続いてきたが、これを逆手に安倍は色々と矢継ぎ早に決めてくる。更には、党が決めたことに反対するようでは、民主党と同じになると、恫喝によって反対者を封じ込めてしまった。
ここまですると、民主主義とはいったいなんだろうと思えてくる。少なくとも、TPP参加については、日本国民には選択肢がなかったことになる。明確な反対表明していた、共産党と社民党と生活の党には国会での決定権がほとんどない。ほとんどの小選挙区で、国民に選択権はなかった。
こうしてみると、国民がどうのような投票行動をしようとも、TPPに参加することは既定の路線であったことが解る。企業利益のためで、中身も明かさないTPPについて、国民には選択肢はなかったのである。
前回の総選挙で政権奪還した民主党も、平気でマニフェスト(公約)に反することを、数多くやってきた。民主党はまとまらなかったから分解したと、安倍は脅して見せたがそうではない。公約を守ろうとした議員と、それを無視した議員との確執である。反対者を切ることで政権政党の体を保とうとしていただけである。
民主党も自民党も平気で国民の約束を破棄する。公約を破ったように見せない技術は、自民党が一日の長があるが、同じ穴のムジナである。
TPP参加だけをを取り上げるわけではないが、日本の政権を担う政党は、平気で嘘をつく。どれほどの反対があっても被害が深刻でも原発は再稼働させる、行政改革に取り組まず消費税を上げる、財政悪化を顧みず公共投資と国債の乱発をやる。選挙の時そんなこと言わなかったろう。
一体民主主義とは何なんだろう。アメリカと企業利益に奔走する政治に、民主主義を求めることが、土台無理なのかもしれない。