詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Antonio Baños Roca「RECUERDAME QUE TE QUIERO」

2023-04-21 18:21:39 | 詩(雑誌・同人誌)

Antonio Baños Roca「RECUERDAME QUE TE QUIERO」

 Antonio Baños Roca「RECUERDAME QUE TE QUIERO」の詩を読んでいたら、不思議なことばにであった。

Sin rumbo, navegando a la deriva
en un mar de incertidumbre,
llegan los días y las noches
donde mis cabellos blancos
soportan el paso del tiempo.

Atrás quedan ilusiones logradas,
momentos compartidos,
experiencias adolescentes vividas,
promesas por cumplir.

Recuerdo, cuando recuerdo...
El claroscuro de mi comportamiento.
El dulce sonido de tus palabras.
La suave caricia de tus manos.

Pero a veces... tormento y desespero.
Sombras sin voces me acompañan
en mi viaje a ninguna parte
con sonidos de colores apagados.

Y tú, a mi lado cuando despierto
con tus manos acariciando mi frente,
recordándome que soy y que existo.


 三連目、二行目のある「claroscuro」。claro (明るい)とoscuro(暗い)が結びついている。日本語にも「明暗」ということばがあるから、これがそのまますぐに「撞着語」(oxímoron)とはいえないかもしれないが、そうした類のことを感じさせる。
 恋愛は、いつでも明るい部分と暗い部分をもっている。「あなたのことば、その甘い響き」「あなたの手、その柔らかな愛撫」は、私を誘う。そして、とらえて放さない。それが甘美であればあるほど、不安も忍び寄る。恋愛の歓喜の一瞬にさえ、不安は忍び込む。そして、それは不安があるからこそ、喜びを高めるのかもしれない。不安は、いうまでもなく、自分自身のなかから生まれてくる。聞いてはいけない声が、自分の中から聞こえてくる。それは、いつでも詩人に寄り添っている。
 Antonio が書いていることは、私が「誤読」している内容(意味)ではないかもしれないが、「claroscuro」という不思議なことばは、そういうことを思い起こさせる。「Sin rumbo (方針もなく、あてもなく)」という書き出しのことばが、それを感じさせるし、「 incertidumbre(不確実性、あいまい)」も、そうした「不安」を増幅させる。途中に「歓喜」が書かれているけれども、「不安」がよぎる。
 「RECUERDAME QUE TE QUIERO」(お前を愛している、そのことを思いださせてくれ)というのも、その「不安」と不思議な呼応をしている。

櫂もなく、あてもなく
私は不確実という名の海を漂う
繰り返しやってくる昼と夜の
つきることのない時間に洗われ
私の髪を波のように白く乱れる

実現してしまった私の夢
二人で共有した至福の瞬間、
青春の純粋ないのち
約束は必ず果たされた

覚えている、忘れることなく覚えている
私をとらえて放さないそのまぶしいような、
あなたのことば、その甘い響き
あなたの手、そのやわらかな愛撫

そして同時に、私をとらえて放さない
苦しく不安な予感、声を持たない影が、
どこにもたどりつけない旅を
沈んだ音をひきずりながらついてくる

でも、きみが、私のそばによりそうきみが、
その手が、いつもと同じように
私の額に触れるので、私は私を思い出す
きみを愛する私はまだ生きている

 これは、「翻訳」というよりも、「意訳」、あるいは「誤訳」の類だが、日本語にしてみたくなって書いてみた。

 

コメント
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