野沢啓「言語暗喩論のたたかい--時評的に3」(「イリプスⅢ」03、2023年04月10日発行)
野沢啓「言語暗喩論のたたかい--時評的に3」は、「言語暗喩論」をひと休みして、ある賞めぐるあれこれを書いている。
これは、私のように、あまり接触のない人間には、すこぶるおもしろい文章であった。何がおもしろいといって、野沢は「言語暗喩論」の完成に向けでことばを動かしている人間だと思っていたら、ほかのことにも関心があったということがわかったことである。「言語暗喩論」を脇においておいても、まず、書いておきたいことがある。
なるほど。
しかしまあ、「人事」というのもの、おもしろいものだなあ。「人事」であるから、そこに書かれていることは、別の人から別の「出来事」に見えるかもしれない。「出来事」は、それに直面した人の数だけ存在する、ということだろうなあ。
もしそうであるなら。
「ことば」という「出来事」も、「ことば」に向き合う人の数だけ、その「個別な様相」を持っていることになるだろう。
そう考えれば、野沢が今回書いていることも「〇〇暗喩論」というような「論」として成り立つかもしれない。「詩人賞暗喩論」「詩人賞選考委員暗喩論」。何の「暗喩」? もちろん「詩人会(界?)人事」の「暗喩論」である。詩人賞、詩人選考委員、その選考過程は、すべて何かの暗喩である。
野沢は「人事」と言わず、まあ「時評」と言うのかもしれないが。
しかし、と、私はもう一度「しかし」を書く。
結局ね、私は、野沢が書いているのは「野沢暗喩論」なのだと思う。「言語暗喩論」も「野沢言語暗喩論」、人事について書けば「野沢人事暗喩論」。だから、すべては「野沢暗喩論」なのである。
詩の言語が他の言語に先立つというのは、結局、野沢の言語は他の人の言語に先立つという主張につながるんだろうなあ、と思う。そういう意味で、あらゆることは「野沢暗喩論」を、さまざまに展開したものだろうなあ、と思う。
別の形で言い直すと。
私は野沢の「詩の言語」を特権化した主張には疑問を感じるが、野沢が野沢を特権化する主張にはまったく疑問を感じない。それでいいのだと思う。「詩の言語」ではなく、野沢の言語(主張)をテーマにして「暗喩論」を展開すれば、非常に説得力があると思う。少なくとも、私は納得する。
詩を書く人は大勢いる。小説を書く人も大勢いるし、哲学を書く人もいる。ことば以外に色や形に取り組む人もいれば、音に取り組む人もいる。そのなかから詩を選んで、詩を特権化していることに私は疑問を感じるが、「野沢自身」を特権化して書くのであれば、私はほんとうに納得する。だれだって自分を「特権化」して書く権利も持っていれば、自由も持っているし、義務も持っている。
今回書いているように、もっと野沢を特権化して論を展開すれば「言語暗喩論」はとても説得力のあるおもしろいものになると思う。野沢を特権化するのではなく、詩を特権化しようとしているから、私は疑問に思うのである。言い直すと、詩を特権化することで、野沢を正当化しようとしていると感じ、いやあな気持ちになるのである。今回のように、野沢を特権化して、その野沢が特権を駆使して詩を書いている、詩論を展開しているということで突っ走ればいいのだと思う。
根幹の野沢の書いている文章は、とても率直な、野沢自身の声に満ちた(野沢の声だけで書かれた)文章だと思った。
**********************************************************************
★「詩はどこにあるか」オンライン講座★
メール、skypeを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。
★メール講座★
随時受け付け。
週1篇、月4篇以内。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。
★ネット会議講座(skypeかgooglemeet使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
週1篇40行以内、月4篇以内。
1回30分、1000円。
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。
費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。
少なくとも月1篇は送信してください。
お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com
また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571
*
オンデマンドで以下の本を発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com