詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

Estoy Loco por España(番外篇344)Obra, Paco Casal

2023-04-23 23:06:54 | estoy loco por espana

Obra, Paco Casal
Grabado en plancha de hierro tratada al ácido.
38 x 28 mancha 28 x 15,5

 Esa ventana me recuerda. Detrás de esa ventana hay un espejo. Una vez intenté reflejar mi cuerpo desnudo en ese espejo empañado por la ducha. En el espejo, los contornos de mi cuerpo eran turbios, como un grabado imperfecta. En mis flancos se extendían vagas sombras. No se había caído en la ducha. Donde aqul dedo se había movido, como buscando algo. En el espejo, mi dedo comienza a trazar la sombra, recordando aquel dedo. Aquel dedo que se movía como si tallara una huella. Al comenzar a escribir este poema, yo ya conocía la metáfora de un grabado. Un secreto que, cuando sólo está tallado, aún no ha sido visto por nadie. Sólo cuando se refleja en un espejo, de forma invertida, lo algo que puede verse. Algo que sólo yo sé. Pero si otros dedos tocaran el mismo lugar, ellos daría cuenta de mi secreto. Porque mi cuerpo se movería. No, ahí no. Ahí no, matando el llanto. Y entonces, abruptamente, se interrumpe, abruptamente termina. Lo perdí todo. Debería haber mirado por la ventana entonces, no en el espejo. Debería haber mirado al cielo vacío.


 あの窓を見ると思い出す。あの窓の奥には、鏡がある。その、シャワーで曇った鏡に、私は、自分の裸を映してみたことがある。鏡のなかで、刷り損ねた版画のように、肉体の輪郭が濁っていた。脇腹に、あいまいな陰影が広がっていた。それはシャワーでは落ちなかった。あの指が、何かを探すように動いた場所。鏡のなかでは、その指を思い出しながら、私の指がその陰影をなぞりはじめる。版画を彫るように動いたあの指。版画という比喩は、すでに知っていたのだ。彫られただけでは、まだ、だれにも見られることのない秘密。鏡に映したときだけ、反転した形で、見えてしまうもの。私だけが知っているもの。だが、もし指が同じところに触れたなら、気がついてしまう。私の脇腹が動いてしまうから。違う。そこではない、と叫びを殺しながら。そして、突然、中断し、突然おわってしまう。私は何もかも、失った。私はあのとき、鏡ではなく、窓の外を見るべきだったのだ。だれもいない空を見るべきだったのだ。

 

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平田俊子の視点

2023-04-23 08:49:10 | 詩(雑誌・同人誌)

平田俊子の視点(読売新聞、2023年04月23日)

 2023年04月23日の読売新聞。「こどもの詩」というコーナーに、古井いつきの「私のおなか」という作品。

おなかには三つお部屋がある
一つ目はおくすりのへや
二つ目はおやつのへや
三つ目はごはんのへや
もぐらさんのおうちみたいに

 さて、この詩に、いったいどんなことが言えるか。平田俊子は、こう書いている。

 大人になるとお酒の部屋もできたりします。

 この感想は、とてもいい。子どもを特別扱いしていない。子どもはおとながお酒を飲むことを知っている。子どもは飲んではいけない、ということも知っている。だから、ね、大人になるといいでしょ? なりたいでしょ、とそっと言っている。
 このちょっとふざけた励ましは、「一つ目はおくすりのへや」の奥にあることばをくみとっているのだろう。
 この子どもは、薬を毎日飲まないといけない。何らかの病気なのだろう。そして、子どもは薬を飲むことを、部屋が三つあるという言い方で納得している。だれもが三つの部屋をもっているわけではない。このけなげな努力を、ゆっくりとゆさぶり、ときほぐしている。
 平田の詩には、何かしら「配慮」の匂いがして、私はその「配慮」が嫌いというか、どうしても肉体がむずむずしてしまうのだが。
 でも、この子どもに対する「気配り」はいいなあ、と思った。子どもは「気配り」されたことに気がつかない。「対等」を、まあ、対等(平等)ということばではつかみ取らないと思うが、その「対等/平等」を感じ、目を丸くするだろう。
 その驚き、喜んでいる子どもの顔が見てみたいし、あとで舌を出している平田の顔も見てみたい。
 
 詩は、書かれただけでは、完結しない。

 

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