マーティン・スコセッシ監督「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」(★)(中州大洋、スクリーン1、2023年10月21日)
監督 マーティン・スコセッシ 出演 レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ
この映画がつくられるというニュースを知ったとき、見たいと思った。予告編を見たとき、期待できないと思った。そして、実際に見て、がっかりを通り越して、スコセッシもディカプリオもデ・ニーロも、もう見なくていいと思った。
映画としては、まず、あ、このシーンをもう一度みたいという衝撃的な美しさを感じさせるシーンがない。(ラストの、上空からとったシーンが、反動で?、美しく見えてしまう。)
映画はただストーリーを追っていくだけ。それに3時間半もつきあっていると、ただただ、疲れる。
ディカプリオ。昔は気がつかなかったたが、歯が汚い。歯並びが悪くて、しかも汚れている。そのため、(なのかどうかわからないが)、ひたすら口をへの字に歪めている。派を見せてはいけないと自覚しているようだ。
ちょっと頭が足りない感じ(「ギルバート・グレイプ」の少年は、ディカプリオにぴったりだった)の表情をするとき、目が輝くように見えるが、映画のなかで「青い目が(目の青が)美しい」とセリフで説明されるようでは、もう「美男子」ではない。魅力的ではない。頭が足りないまま、デ・ニーロにふりまわされ、さらにリリー・グラッドストーンの最後にさしのべられた手をつかみきれない愚かさが、演技(顔の表情)だけからは伝わってこない。太ってしまった肉体を隠す衣裳は、まあ、時代背景もあるからそれはそれとして許せるが、肉体全体を動かす演技、そこにただ佇むだけで感情や意識の変化を表現する演技ができない。
デ・ニーロもデ・ニーロで、顔だけで演技する。年齢から考えて、もうアクションはできないのだけれど、ほら、ハンフリー・ボガートなんて、両手をだらりとぶらさげてつったっているだけ、「おいおい、手を動かして演技しろよ」と軽口を叩きたくなるようなかっこうをしているが、なんとなく引きつけられ、見てしまうのとは大違い。だいたい、笑ったときの顔が「人がよすぎる」ので、裏に何か隠している感じがしない。というと、いいすぎだけれど、深みがない。
と書くと、私の書きたいこととは違ってしまう感じもするが。
私は映画を見るとき、実は、「役」そのものになりきった演技というものには、ありま感心しない。「これは演技ですよ」という軽い感じ、どこかで「地」をのぞかせるような演技が好き。
だから、メーキャップにこだわった「そっくりさんショー」の演技なんかは、見ていて、ぞっとする。ぜんぜん似ていないけれど、「あ、これが〇〇(モデル)なのか、そのひとの感情はこう動くのか」と感じさせる演技が好き。映画にしろ、芝居にしろ、やっぱり「役者」を見に行くもの、「スター」を見に行くもの。
なんというか。
この映画では、演じられできあがって「ディカプリオ」「デ・ニーロ」を見るという感じで、そこには「地のディカプリオ」「地のデ・ニーロ」がいない。
これじゃあ、つまんないね。
スコセッシが最後に顔出ししているのが、まあ、そういうことでもしないとこの映画を見に来る人がいない(売れる要素がない)ということだね。それを自覚している。途中、ロバート・デュバル(私は、彼の演技が大好き)が出ていたように見えたけれど、違ったかな? 私は目が悪くなってしまっているし、セリフまわし(声)もはっきり聞こえなかったので勘違いかもしれない。
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映画とは、ちょっと関係ないが、中州大洋が来年3月で閉館する。建物の老朽化で、取り壊し。「天神ビックバン」の一貫かもしれない。その後、再開するかどうかは未定という「お知らせ」が貼ってあった。ミニシアター系の作品も多く上映してきたので、なくなるとしたら寂しい。最近は映画館から遠ざかっている私だけれど。
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