高柳誠『フランチェスカのスカート』(22)(書肆山田、2021年06月05日発行)
「オルガン」。
オルガンは、ぼくの
胸をどこまでもふくらませ、やがて星空と一体化させる。星空と胸
との究極的一致。オルガンの一音一音は、予想もしなかった音を響
かせ、それぞれが自分の意思をもつように自由にふるまう。それで
いて、全体できちんと秩序だった統制が取れていて、いつのまにか
そこに大きな建築が出現する。
「オルガン」「オルガンの一音一音」を「ことば」と読み替えれば、それはそのまま高柳の書いている詩になる。ぼくの胸と星空(宇宙/世界)の一体化。究極的一致。そこではことばが自由にふるまい、大きな「建築(言語空間)」をつくる。
だが、この「建築」は、内部と外部が一転する。
豊かさは内側へ内側へと運動していき、
ついにその豊かさをかかえきれなくなった星空が、一挙に爆発して
無限大に拡散する
無限大に拡散するものとしての、「言語空間」の爆発。それが「一挙に」ということが、高柳には必要なことなのだ。「爆発」というのはいつでも「一挙に」に起きる。ゆっくり、時間をかけて爆発するということは、ありえない。だから「一挙に」は論理的には不必要なことばであるけれど、「一挙に」がなければ、高柳は「爆発」ということばを書けないだろう。
「一挙に」のなかには、内部の充実と爆発の拡散の「究極的一致」がある。