123 小アジアのあの町で
アクティウムの海戦。予想しなかった結果をどう書くか。最初から改めて書き直す必要はない。
こういうことは、あらゆる歴史に適用できるだろう。戦いの結果など、市民には関係がない。市民に関係があるのは、自分の存在、自分のアイデンティティだけである。
繰り返される「ギリシャ」。それだけが市民の求めるアイデンティティだ。だれが統治しようが知ったことではない。ここに「市民の知恵」がある。
カヴァフィスは「ギリシャの慣用句」を多用しているのではない、ギリシャのシェークスピアではないか、と私は勝手に推測しているが、この「市民の知恵」にもそれを感じる。「慣用句」とは「市民の知恵」の結晶である。
l池澤は、こんなふうに書いている。
カヴァフィスは「慣用句」を多用することで、ギリシャ文化を守っている、守ろうとしているのだろう。「永く伝える」のは「オクタヴィアヌスの業績」ではなく「ギリシャ語」の強さだ。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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アクティウムの海戦。予想しなかった結果をどう書くか。最初から改めて書き直す必要はない。
名前だけ入れ替えればいいのだ。
最後のところの「カエサルの紛い物である
オクタヴィアヌスの災厄から
ローマを解放した」を
「カエサルの紛い物である
アントーニウスの災厄から……」とすれば
きちんと帳尻が合う。
こういうことは、あらゆる歴史に適用できるだろう。戦いの結果など、市民には関係がない。市民に関係があるのは、自分の存在、自分のアイデンティティだけである。
ゼウスが彼に与えし才能を尊び、力強きギリシャの保護者にして、
ギリシャの風習の名誉を尊重し、
ギリシャの領土全体で敬愛され、
(略)
業績をギリシャ語によって、韻文と散文の両方によって、
栄誉の正しき器であるギリシャ語を用いてこそ
永く伝えるであろう」
繰り返される「ギリシャ」。それだけが市民の求めるアイデンティティだ。だれが統治しようが知ったことではない。ここに「市民の知恵」がある。
カヴァフィスは「ギリシャの慣用句」を多用しているのではない、ギリシャのシェークスピアではないか、と私は勝手に推測しているが、この「市民の知恵」にもそれを感じる。「慣用句」とは「市民の知恵」の結晶である。
l池澤は、こんなふうに書いている。
彼らにとって戦いの帰趨はどうでもいい。ローマの勢いの前でいかにギリシャ文化を守るかだけが関心事なのだ。
カヴァフィスは「慣用句」を多用することで、ギリシャ文化を守っている、守ろうとしているのだろう。「永く伝える」のは「オクタヴィアヌスの業績」ではなく「ギリシャ語」の強さだ。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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