詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『土地の名-人間の名』(1986)(9)

2019-05-29 10:12:11 | 嵯峨信之/動詞
「地名、人名」

* (氏名 人間は)

氏名 人間はそれをなぜつけたか
雲には名前はない ひたすらながれて いつとなく消える

 書かれていない動詞がある。「ある」。人間には名前がある、雲には名前がない、と言いなおすと「ある」と「ない」が対比されていることがわかる。
 「ない」は「流れる」「消える」という動詞といっしょに動いている。そうならば、書かれていない「ある」は「流れない」「消えない」といっしょに動いている。
 人間に名前をつけるのは、人間を「消さない」ためである。そこには祈りが「ある」。





*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
『誤読』販売のページ
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