詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

彼の水彩画は、

2014-12-05 01:11:12 | 
彼の水彩画は、

彼の水彩画は、--とそのひとは言った。
明暗以外のものをすべて省略する。
代表作の「窓辺」を思い浮かべてごらん。
窓の下に広がる瓦屋根、左側の壁は、
暗い色のなかで沈黙している。
はるか遠くに橋と塔のようなものがあり、
その階段に日が差している。その明るさのなかに、
輝きが集まろうとしている。
右端に少し見える海の青さえも。
その遠景をあすの希望、
暗い近景をきょうの絶望と呼ぶと、
彼の描く明暗は彼の語り尽くされた生涯と重なる。

彼の水彩画は、--とそのひとはつけくわえる。
明暗以外のものを省略しているが、
残された明暗を意味にしてはいけない。
彼の精神の象徴にしてはいけない。
「窓辺」を詩に書くなら、ほかのことを書かなければいけない。
そのひとはそう言ったのだが。

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