詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

嵯峨信之『詩集未収録詩篇』を読む(111)

2021-04-18 14:10:37 | 『嵯峨信之全詩集』を読む

* (たいまつの火をかざして四、五人がぼくの前を過ぎていつたことがある)
<blockquote>
それはぼくと関りのない世界のできごとで
記憶もなく想像もない
</blockquote>
 この詩行は矛盾している。「記憶がない」なら「過ぎていったことがある」とは書けない。また「想像できない」なら「ぼくと関わりがない」とは言えない。「関わりがない」のが「世界」なのか「できごと」なのか、この断片からではわからないが。
 たぶん、「たいまつの火をかざして四、五人がぼくの前を過ぎていつたことがある」ということばを書きたかったのだ。それは嵯峨の記憶ではない。また、想像でもない。ことばが、突然、嵯峨にやってきた。あらわれたことばは、書かないことには消えてしまう。だから、それを書いたのだろう。

 

 

 

*

詩集『誤読』は、嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で書いたものです。
オンデマンドで販売しています。100ページ。1500円(送料250円)
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