高橋睦郎『深きより』(23)(思潮社、2020年10月31日発行)
「二十三 立ちぞ浮かるる」は「宗祇」。
この「論理」はあまりにも論理的で、味気がない。芭蕉は、この宗祇にならったということだろうし、ほかの詩人たちも「旅」を生きたどうかは別にして、「ことばがわたくしを産み、わたくしを育てた」「ことばのなかでわたくしはわたくしになつていつた」と言えるだろう。
宗祇の、宗祇性は、どこにあるのか。
「捌く」という動詞に、高橋は、宗祇を見ている。「座」を捌く。しかも「一座」を捌く。このときの「一座」とは「一期一会」の「一」を含んでいる。その瞬間にだけ「現はれる」ものである。そして、それは「捌く」ことによって「一」を超えて「永遠」になる。「捌く」は姿を整え、完成させるということである。
高橋が試みているこの詩集そのものが、高橋の「捌き」によって初めて成立する「一回かぎり」の「永遠」なのである。
「捌く」ことによって、その「座」に存在する「座」そのものを、「定着」ではなく「漂白」させる。「ことば」そのものを「漂白」させる。新しい旅、誰も体験したことのない、しかし、誰もが知っている旅へと誘い出す。
そこで、ことばは「古今」に、「源氏」に、「伊勢」に会う。それもやはり「一期一会」なのだ。
稗田阿礼から出発して、何人ものことば(人生)を「捌き」ながら、高橋は、「わたくしはわたくしになつていつた」という過程を、この詩集のなかで、新しく実践して見せている。
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「二十三 立ちぞ浮かるる」は「宗祇」。
連歌こそがわたくしを産み わたくしを育てた
連歌がわたくしに命じるので わたくしは旅に出た
旅に次ぐ旅の中で わたくしはわたくしになつていつた
この「論理」はあまりにも論理的で、味気がない。芭蕉は、この宗祇にならったということだろうし、ほかの詩人たちも「旅」を生きたどうかは別にして、「ことばがわたくしを産み、わたくしを育てた」「ことばのなかでわたくしはわたくしになつていつた」と言えるだろう。
宗祇の、宗祇性は、どこにあるのか。
武将たちは束の間のたのしみに 連歌の座を設けたがつた
そこに現はれて一座を捌くわたくしは 漂白の乞食神
「捌く」という動詞に、高橋は、宗祇を見ている。「座」を捌く。しかも「一座」を捌く。このときの「一座」とは「一期一会」の「一」を含んでいる。その瞬間にだけ「現はれる」ものである。そして、それは「捌く」ことによって「一」を超えて「永遠」になる。「捌く」は姿を整え、完成させるということである。
高橋が試みているこの詩集そのものが、高橋の「捌き」によって初めて成立する「一回かぎり」の「永遠」なのである。
「捌く」ことによって、その「座」に存在する「座」そのものを、「定着」ではなく「漂白」させる。「ことば」そのものを「漂白」させる。新しい旅、誰も体験したことのない、しかし、誰もが知っている旅へと誘い出す。
そこで、ことばは「古今」に、「源氏」に、「伊勢」に会う。それもやはり「一期一会」なのだ。
稗田阿礼から出発して、何人ものことば(人生)を「捌き」ながら、高橋は、「わたくしはわたくしになつていつた」という過程を、この詩集のなかで、新しく実践して見せている。
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嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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