自信を喪失した日本企業を世界的な不況が襲っているが、しかし、日本企業には、元々、人材・技術共に優れた宝が内在しているのだから、自信を持って、その宝を引き出せば困難に打ち勝つ活路が開ける。自信を持って、ニッポンを再起動しよう。
そんな問題意識で、日経ビジネス最新号が「地力を信じろ」特集を組んで、色々な日本企業の地力を掘り起こして事業を活性化してる様子をレポートしている。
本誌は提言する
「安易に外の力に頼るな 成長の原動力は社内にある」
と銘打って記事を書いているのだが、何時もの特集と同じで、焦点がぼけていて何を意図しているのか分かり難い。
要するに、日本企業は、社内に内包する人材や技術などの経営資源を十分に活用していないので、活性化しようと言う、いわば、経営のイノベーションの勧めである。
この提言だけを見れば、高度で大規模かつ複雑なイノベーションでは、グローバル・ビジネスの常識乃至趨勢と言っても良い筈のオープン・ソース・マネジメントと逆行する方式であるし、それに、先人に聞く「地力」経営と言う囲み記事で、シャープの佐々木正元副社長の言う「共創」と言う概念や特別インタビューでの島津製作所の田中耕一フェローの言う「他分野と連携する異分野融合」の大切さと言った考え方とも大分乖離がある。
特に、ホンダの例をあげて、大プロジェクトではなく小集団から新しい価値ある製品が生み出されたとして、あたかも閉鎖された専門のみを追及する小グループがイノベーションを生み出す源泉であるかのようにレポートしているが、これは、各部門が自律的にイノベーションを追求出来るような活性化された組織形態であるとかホンダのコーポレート・カルチュアやDNAが成せる技で「地力」だから優れているのではない。
この特集記事の冒頭は、田中耕一氏のノーベル賞級の発明を事業化出来なかった島津製作所の経営の拙さから話を説き起こしているが、このことについては、田中氏が、新技術の発見とその価値の認識、事業化への試み、資金手当て等々イノベーションの事業化について語っており、次のステップへと繋ぐ目利きの段階で失敗したことを反省として語っている。
田中氏が、他のノーベル賞科学者のように学者や大学教授などの専門家であれば発見と事業化の乖離があっても問題はなかったが、偶々、島津と言う事業会社の社員であった故に、問題になったのであって、これは、島津の経営姿勢に問題があったと言うよりも、大抵の発明発見がイノベーションとはならずに消えて行き、厖大な特許や知財が眠っていることを考えれば、極普通の現象である。
シュンペーターが指摘しているように、最も大切なのは、発明発見や経済社会とそのシステムの変動変化等を敏感に察知して、リスクを冒してでも事業化しようと言う目と意思を備えたイノベーターの存在なのである。
この日経ビジネスには、色々なケースで地力による事業活性化を例証しているが、要するに、社内イノベーターを生み出せるような環境なり組織システムが企業に備わっているのかどうかと言うことで、その、イノベーターに火を点けた会社が成功していると言うことではないかと思う。
この場合のイノベーターと言うのは、発明発見など新機軸、新結合を事業化できるような段階まで育てる社員乃至グループと言う意味で、事業化の決断は当然マネジメントの責務である。
従って、イノベーションの実現は、地力の場合もあるであろうし他力やオープンソースの場合もあり、その場その場で違っており、地力を活用することは、必要であり大切なことではあるが、企業にとって、地力活用に固守したイノベーションや経営革新の追及が、正しい戦略や戦術であるのか、全く、別な次元の問題である。
島津の場合は、社長の命令で、「得意先から『見えないで困っているもの』を聞いて来い」と発破がかかって、顧客ニーズから研究開発、製品開発するようになり事業が好転したと言うことだが、このようなことは、島津の経営者にコトラーを読んで経営に活かせる人間が居さえしておれば造作もないことであった筈で、
かって、ソニーのPS3開発とその事業化の失敗についても書いたが、モノを造って売る事業会社でありながら、マーケット・リサーチは愚か、何を作って誰をターゲットにどのように売るのかと言った販売戦略のイロハさえ十分に考えずに事業化しているケースがあまりにも多いのである。
話は、飛んでしまうが、これだけ多くの経営学書が氾濫しているのに、本当に、指南書としてこれらを活用しようとする経営者が少ないというか、運転免許なしで、すなわち、経営者免許なしで、会社を運営している経営者が多いと言うことであろうか。
この日経ビジネスの特集記事を読んでいて、いずれも経営学書に極当たり前に書かれていることばかりで、これが記事になるのかと思うケースが多いのにビックリしている。
(追記)写真の椿は、白羽衣。
そんな問題意識で、日経ビジネス最新号が「地力を信じろ」特集を組んで、色々な日本企業の地力を掘り起こして事業を活性化してる様子をレポートしている。
本誌は提言する
「安易に外の力に頼るな 成長の原動力は社内にある」
と銘打って記事を書いているのだが、何時もの特集と同じで、焦点がぼけていて何を意図しているのか分かり難い。
要するに、日本企業は、社内に内包する人材や技術などの経営資源を十分に活用していないので、活性化しようと言う、いわば、経営のイノベーションの勧めである。
この提言だけを見れば、高度で大規模かつ複雑なイノベーションでは、グローバル・ビジネスの常識乃至趨勢と言っても良い筈のオープン・ソース・マネジメントと逆行する方式であるし、それに、先人に聞く「地力」経営と言う囲み記事で、シャープの佐々木正元副社長の言う「共創」と言う概念や特別インタビューでの島津製作所の田中耕一フェローの言う「他分野と連携する異分野融合」の大切さと言った考え方とも大分乖離がある。
特に、ホンダの例をあげて、大プロジェクトではなく小集団から新しい価値ある製品が生み出されたとして、あたかも閉鎖された専門のみを追及する小グループがイノベーションを生み出す源泉であるかのようにレポートしているが、これは、各部門が自律的にイノベーションを追求出来るような活性化された組織形態であるとかホンダのコーポレート・カルチュアやDNAが成せる技で「地力」だから優れているのではない。
この特集記事の冒頭は、田中耕一氏のノーベル賞級の発明を事業化出来なかった島津製作所の経営の拙さから話を説き起こしているが、このことについては、田中氏が、新技術の発見とその価値の認識、事業化への試み、資金手当て等々イノベーションの事業化について語っており、次のステップへと繋ぐ目利きの段階で失敗したことを反省として語っている。
田中氏が、他のノーベル賞科学者のように学者や大学教授などの専門家であれば発見と事業化の乖離があっても問題はなかったが、偶々、島津と言う事業会社の社員であった故に、問題になったのであって、これは、島津の経営姿勢に問題があったと言うよりも、大抵の発明発見がイノベーションとはならずに消えて行き、厖大な特許や知財が眠っていることを考えれば、極普通の現象である。
シュンペーターが指摘しているように、最も大切なのは、発明発見や経済社会とそのシステムの変動変化等を敏感に察知して、リスクを冒してでも事業化しようと言う目と意思を備えたイノベーターの存在なのである。
この日経ビジネスには、色々なケースで地力による事業活性化を例証しているが、要するに、社内イノベーターを生み出せるような環境なり組織システムが企業に備わっているのかどうかと言うことで、その、イノベーターに火を点けた会社が成功していると言うことではないかと思う。
この場合のイノベーターと言うのは、発明発見など新機軸、新結合を事業化できるような段階まで育てる社員乃至グループと言う意味で、事業化の決断は当然マネジメントの責務である。
従って、イノベーションの実現は、地力の場合もあるであろうし他力やオープンソースの場合もあり、その場その場で違っており、地力を活用することは、必要であり大切なことではあるが、企業にとって、地力活用に固守したイノベーションや経営革新の追及が、正しい戦略や戦術であるのか、全く、別な次元の問題である。
島津の場合は、社長の命令で、「得意先から『見えないで困っているもの』を聞いて来い」と発破がかかって、顧客ニーズから研究開発、製品開発するようになり事業が好転したと言うことだが、このようなことは、島津の経営者にコトラーを読んで経営に活かせる人間が居さえしておれば造作もないことであった筈で、
かって、ソニーのPS3開発とその事業化の失敗についても書いたが、モノを造って売る事業会社でありながら、マーケット・リサーチは愚か、何を作って誰をターゲットにどのように売るのかと言った販売戦略のイロハさえ十分に考えずに事業化しているケースがあまりにも多いのである。
話は、飛んでしまうが、これだけ多くの経営学書が氾濫しているのに、本当に、指南書としてこれらを活用しようとする経営者が少ないというか、運転免許なしで、すなわち、経営者免許なしで、会社を運営している経営者が多いと言うことであろうか。
この日経ビジネスの特集記事を読んでいて、いずれも経営学書に極当たり前に書かれていることばかりで、これが記事になるのかと思うケースが多いのにビックリしている。
(追記)写真の椿は、白羽衣。