熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

FT:世界を揺るがす食糧危機

2008年04月09日 | 地球温暖化・環境問題
   日経ビジネスの世界鳥瞰で、FTの記事を掲載し、関税引き上げ、輸出禁止、価格凍結・・・世界各国は、食糧安保を確保するために、必死になって動き始め、世界を揺るがす食糧危機が深刻な問題となって来たことを報じている。
   安い石油をがぶ飲みにして経済成長を推し進めてきたアメリカが、構造不況に突入して大きく経済のパラダイムシフトを強いられているのと同じ様に、金さえ出せば、世界中の食料が安く文句なしに手に入ると考えて、飽食の限りを尽くしてきた日本経済が、間もなく深刻な食糧危機に直面すると言う前兆が現れて来たということを示している。

   日本の食糧自給率は39%で、世界でも最低水準でもあり、例えば、中国からの食料の輸入が止まれば、日本の台所は完全に干上がってしまうと言うことを意味している。
   BSE問題で米国産牛肉の輸入がストップしたり、毒物事件で中国の冷凍食品の輸入が頓挫したり、散発的には、食糧問題は起こって来ているが、今回の石油や小麦等の農産物の価格高騰などの影響で多くの食品が一斉に値上げされるようなケースは、最近では稀であった。

   しかし、農産物輸出国が、食料安保の為に、高い輸出関税や輸出禁止、価格凍結といった制約を実施したり、バイオ燃料に対する政府援助が食料生産を制限したり、或いは、開発途上国の急速な食料需要の拡大などによって、需給関係を逼迫させ、世界中の農産物価格の上昇を誘発して食品価格を急速に上昇させている。
   このような動きに対して、収穫量を増やし、食料価格を引き下げられる遺伝子組み換えに対する政府の方針を覆させて、促進させようと言う強力な運動が広まってきている。

   経済社会は、農業、工業、知識情報、と言う時系列で、付加価値の増加を担う産業が移行しながら発展して来たが、マルサスの人口論やローマクラブの「成長の限界」等の警告を突破して、今日まで進んで来たが、天然資源や食糧生産の限界と言う亡霊が再び力を増して人類の未来に立ちはだかって来た。
   特に農産物を主体とする食料生産については、水資源の深刻な枯渇問題や地球環境の汚染のみならず、エタノール等エネルギー資源とのバッティングなど、人口の驚異的な激増傾向に逆行して、多くの増産抑制要因が発生して来ており、益々、食糧危機の様相を強めて来ている。
   遺伝子組み換えは勿論のこと、宇宙船地球号のエコシステムを維持しながら、革新的な食料イノベーションを進めない限り、正に、成長の限界のみならず、人類の限界に直面せざるを得なくなるのである。
   
   これまでの人類の歴史は、CULTURE(文化)と言う言葉が、CULTIVATE(耕作する)から派生したように、農産物の増産のための開墾・開発が、人類の生活水準の向上と文化・文明の発展と同意語であったのだが、今や、臨界点を突破してしまって、全く利害が対立するようになってしまった。
   農産物の増産のために開発を進めれば進めるほど、人類が拠って立つところの足元・地球環境を破壊することになり、これまでのような算術級数的なこれ以上の物理的な増産・成長は不可能になってしまったのである。

   山紫水明、豊かな四季と美しい自然環境に恵まれた日本ほど美しい国は少ないが、如何せん、天然資源に恵まれないにも拘らず、中途半端に豊かになって無駄な消費生活にうつつを抜かしている多くの国民が住んでいる。
   地球が悲鳴を上げ警告を発しているにも拘らず、お金さえ出せば、何時でも好きなだけ食料を買えると思って安心し切って花見酒の経済に酔いしれている。
   ガソリンが値上がりしたと言っては暫定税率に一喜一憂し、毒入りギョウザがけしからんと言っては国産品を見直し、目先だけしか見ていないが、世界的な食糧危機の悪魔の足音は、もう、そこまで近づいて来ている。

   今の全く無為無策の政治を見ていると、ある日、突然、輸入がストップして、或いは、価格が暴騰して、昔のトイレット・ペイパー騒ぎを増幅したような日本の食糧危機が勃発して、日本中が戦中並みの混乱に巻き込まれることは必定である。
   農水行政の見直しも含めて、日本の食料安保の確保が、最も日本の緊急課題であることを深刻に認識すべきトキであり、これほど、バイオテクノロジーを筆頭に食料イノベーションが求められているトキはないと思っている。

(追記) 椿は、港の曙。

   

   
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