熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

岩手・角館の旅(3)・・・田沢湖

2010年06月06日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   田沢湖は、実に美しい湖である。
   湖岸に近づくと、まず、その水面の美しさに感動する。
   透明度が、摩周湖の次に高いと言うから、とにかく、水面が透き通って見えていて、それに、水深が423.4メートルと日本一の深さで、その湖面は、あるところではコバルトブルー、あるところでは、瑠璃色と言うか、深い緑色を帯びた濃青と言うか、深いブルーの何とも言えない美しい色をしていて、スイス・アルプスで見た素晴らしい絵のような湖を思い出した。
   裏磐梯の五色沼の水面も美しいが、この湖のブルーは、正真正銘の水の青さなのであるから、正に感動である。

   それに、湖なのに、波打ち際には、白い砂浜が広がっていて、湖岸に林立する赤松越しに湖面を見ると、正に、白砂青松の絵のような海岸風景が広がっているのである。
   残念ながら、その湖岸に、客が居なくて陸揚げされている白鳥のボートが並んでいるのが、如何にも無粋なのだが、観光シーズンには、人々で賑わうのであろうか。

   しかし、この湖は、比較的乱開発が少なくて、湖岸の観光施設そのものも控え目のようで、自然の佇まいが残っていて、湖岸をドライブしていても、自然の美しい風景を満喫できて、非常に快適である。
   丁度、新緑が萌えて一番緑が美しいシーズンなので、一層、湖面の美しさが引き立つのかも知れない。
   特に、この日は快晴で、太陽の光が燦々と湖に降り注いでいて、その光を吸収して益々青さを増している。
   
   うかつにも、全く知らなかったのだが、この湖には、美しいたつこと言う乙女が永遠の美貌を求めた為に龍になったと言う辰子伝説があって、岸から少し離れた湖面に金色に光り輝く美しいたつこのヌード像が立っている。
   乙女の彫刻で有名なのは、コペンハーゲンにある人魚姫の像だが、あれは、あまりにも小さくて貧弱なので、初めて見た人はびっくりするのだが、このたつこ像は、台座2メートル高さ2.3メートルの立像であり金ぴかに光り輝いているので、辰子伝説を知らない人には、逆に、異様に見えるであろうと思われるほど目立っている。

   解説によると、「辰子は姿の良い、雪のような白い肌と黒い瞳の娘となり、その美しさは村中の評判となった」と言うほどの美人だったのだが、水鏡に映った美しい自分の姿に大きく心が揺れて、何時までも若く美しくありたいと、院内岳の大蔵観音に願掛けて、龍に化身したのだと言う。
   長寿を願って、あらゆる食べ物を試みたと言う中国人の話と良く似ているが、すでに美しくて皆の羨望の的なのに、何故それに満足出来ずに永遠の美貌を求めるのか。生老病死、四苦八苦を背負った死すべき運命にある人間の性を思えば、年齢に応じた美しさを保つことにこそ腐心すべきだと思うのだが、願われた大蔵漢音も、たつこの願いを叶える為には龍に化身させる以外に方法はなかったのであろう。

   以前に、イギリスに住んでいた時に、スコットランドのネス湖をドライブしたことがあるが、ここにには、ネッシーと言う怪物が住んでいると言う伝えがある。
   田沢湖の方が、はるかに神秘的で美しいと思うのだが、湖には、どこか、神秘的で不可思議で、季節の移り変わりとともに異様に変化して人々を恐れさせる霊気のようなものがあるので、龍や怪獣たちが住むという伝説が生まれるのであろうか。
   翌朝、早く起きて、もやに霞んだダークブルーのネス湖の湖面を見て、何となくそんな気がしたのである。

   さて、美しい女性と言うことだが、世界中をあっちこっち歩きながら、長い人生を過ごして来たので、それなりに、美しい女性に巡りあい、と言うよりも、見たと言う経験が結構ある筈だが、それ程、記憶に残っていないのが不思議である。
   美しい人と言ってもどう言う意味なのか、人夫々で、ケインズの美人投票と同じで、自分が美人だと思った人には投票せず、人々が美人だと思って投票するであろう人に投票するのが人間だから、どうしても他人の目に影響されてしまう。
   可愛い、セクシーである、魅力的である、色々な表現があるのだが、美しい女性は、男にとっては、やはり、憧れであり、ある時には、生き甲斐となるのであろうが、美しいという表現よりも印象に強く残り忘れられない女性と言う人の方が大切であり、案外、そんな人は、身近に居ることが多いような気がしている。

   私が出会った女性で、記憶に残っている美しい人は、ダイアナ妃である。
   ロンドンで、ある厚生施設の開所式のレセプションで、主賓のダイアナ妃を入り口で並んで出迎える役割を引き受けた時が最初で、握手をして二言三言お話したのだが、その後そばに居て、椅子に座って自分の大きなポートレートにサインをするダイアナ妃を、真横に立って見ていたので、やはり、実際に動きを伴った生身のダイアナ妃の美しさは格別で、報道写真では見られない程、美しくて魅力的であった。
   その後、ロンドン交響楽団の演奏会のエントランスホールで、真横で一回、そのほかは、ロイヤルバレーやロイヤルオペラなどの観劇での機会で何回か、その他大勢で見たというところだが、まだ、離婚前の若々しいダイアナ妃の姿であった。
   
   たつこ伝説で、話が飛んでしまったが、あの神秘的な摩周湖も美しいが、この田沢湖も実に素晴らしい湖だと思いながら、湖畔を後にして角館に急いだ。
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岩手・角館の旅(2)・・・小岩井農場

2010年06月06日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   天候に恵まれなかった岩手も、朝起きてみると大変な好天気で、ホテルの窓からは、まだ少し雪を頂いた岩手山が、青空をバックにくっきりと見えている。
   その岩手山の方角から、まっすぐに、新幹線はやての精悍な姿が滑り込む。
   メトロポリタン・ホテルの朝食を十分に取って体調を整えてから、盛岡駅のJRレンターカーでカローラを借りて、角館に向かうことにした。
   娘から運転に気をつけよとのメールが入ったので、同行の友人が運転するのだと返事したら、それなら安心と言うつれない答が返ってきた。

   小岩井農場は、雫石だから、角館への途中であり、観光資源に乏しい盛岡での唯一の目玉と言うことであろうか、要するに、観光牧場と言うことで、私が、最初に、そんな雰囲気を味わったのは、もう、半世紀以上も昔の六甲牧場であった。
   小岩井農場は、1891年に、荒れ果てた大地を耕して木を植えることから始めた日本最大の民間総合農場と言うことだが、親しんでいるのは、あっちこっちで目にする小岩井農場ブランドの乳製品などで、味付け卵やコーヒー牛乳などは、あれば、文句なしに買って賞味している。

   観光牧場へは、子供が小さかった頃には、マザー牧場など良く行ったが、特に、訪れると言うよりは、あれば、何かの都合で行くと言う感じで、スイス・アルプスやヨーロッパの田舎を走った時に、旅の途中で見た牧場風景が印象に残っているくらいであろうか。
   イギリスの湖水地方の森や湖の田園風景やコツワルドなどの牧場で、草を食んでいた羊たちの長閑な姿を思い出すことがある。
   ストーンヘンジなど、石の列柱のそばまで羊が近づいていて、丁度、望遠レンズで、石と羊の交差した風景を何枚も撮った記憶がある。

   何故、こんなことを書くのかと言うのは、先に触れたように、牧場は、あくまで、原野なり荒れた森林などを、すなわち、自然の景観を破壊して、人間が作り上げた人工的な利便性の高い緑の空間であると言うことである。
   ヨーロッパなどは、肉食を旨としているので、牧畜のために殆ど原始の自然を破壊しつくしてしまって、どこへ行っても、美しい田園地帯が広がっていて、実に快適であるが、はたして、エコシステムとして、人間にとって良いことなのかどうかは分からなくなってしまっている。

   国道を、小岩井農場に向かって外れると、乳牛や牧舎などの遠望風景が現れ、すぐに森の中に入って、新緑の美しい緑のトンネルの中を走る。実に快適である。
   どこかで見た風景だと思ったが、印象の近いのは、ドイツの黒い森だが、この小岩井の森は、あまりにも緑の密度が低くて明るく、それに、軽快で優しすぎて美しい。

   さて、小岩井農場は、丁度、この口絵写真のように、晴天に恵まれて、真っ青に晴れ渡ったブルースカイをバックに、遠くに岩手山が見え、萌えいずる新緑が光り輝いていて、実に美しかった。
   それに、口蹄疫の問題があるので、家畜たちは遠くへ隔離されていて、目の届くところには居ないので、極めて清潔で、正に、緑の牧場がどこまでも広がっていて、小人の小屋のような瀟洒な売店やレストランの建物が点在して点景となっていて、気持ちの良い空間を作り出している。
   家内たちは、売店で、小岩井農場の特産品を探しながら買い物を楽しみ、いそいそとして、孫や娘たちに宅急便を頼んだりしていた。
   私は、ソウセイジやチーズを肴に、ワインでも楽しみたかったが、運転の可能性もあるので、断念した。ヨーロッパでは、ドライブ途中で・・・とは思ったが、ここは日本である。

   ところで、不思議なのは、このまきば園で売っている牛乳は、持ち出し禁止で、可愛いおねえさんが、栓を開けてくれて、その場で飲まなければならない。
   低温殺菌とかで、何となく有難い気がするが、別に、味が格別良いわけではなく、ヨーロッパの牧場で飲んだ絞りたての方が印象に残っている。
   特に、目的があって小岩井農場を訪れたわけでもなかったので、緑の草原を歩きながら、初夏の爽やかで気持ちの良い牧場の雰囲気を、しばらく楽しんでから、次の田沢湖に向かった。
   
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