熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

バラが咲く梅雨時の新宿御苑

2010年06月27日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   梅雨時の新宿御苑は、咲き乱れていた皐月が終われば、緑一色。
   その緑も、木によってマチマチで、自由に枝葉を広げているので、グラデュエーションと、パッチワークのような対比が面白い。
   花といえば、木陰に咲くクチナシや、紫陽花くらいで、何故か、真夏のアラビアで見た唯一の花である夾竹桃も、周りの広い空間に押されて寂しい感じで、これほど、色っけのない新宿御苑も珍しい。

   私は、新宿御苑に入ると、何時も、日本庭園に向かうのだが、楽羽亭の佇まいが何となく懐かしさを感じさせてくれ、池畔のやや高みにある休憩所からの、上の池越しの風景が、季節を一番感じさせてくれるからである。
   新宿御苑は、私が良く散歩道として通っていたキューガーデンとどことなく雰囲気が似ているが、この日本庭園周りの風景は、キューにはない。
   剪定、刈り込みなど、日本庭園のような行き届いた手入れが、キューにはなく、殆ど自然体なのだが、そのかわり、横をテムズ川が蛇行しており、渓谷にも近く、とにかく、色々な種類の沢山の野鳥が群れ集っているのが良く、見ていても飽きない。
   殆どカラスばかりの東京の森とは、大変な違いである。

   当然、この季節は、バラ花壇のあるフランス式庭園を訪れることになる。
   両側に、巨大なプラタナスの並木が左右の遊歩道を挟んで二本ずつ一直線に伸びていて、今は、緑の葉が萌え出でて美しいので、秋の紅葉の頃とは、違った趣があって素晴らしい。
   この遊歩道には、程よい距離を置いてベンチが並んでいるので、天気の良い気持ちの良いシーズンには、読書に勤しんだり、恋を囁く二人姿を、良く見かける。
   閉園の4時を過ぎれば、殆ど誰も居なくなるので、夕日を浴びながら、思いの丈を打ち明けるのには、絶好の舞台かも知れない。

   さて、肝心のバラだが、季節の終わりに近い筈だが、結構、咲いていて綺麗である。
   先のキューガーデンと違って、花がら摘みなど手入れが行き届いているので、最盛期のバラの木だけを残して咲かせているので、見栄えがするのは、流石に日本の庭園である。
   バラの花の種類は、ネームプレートがあるけれど、良く分からないのだが、特に、珍種だとか、最近作出の名品だとかと言ったバラの花が植わっているようには思えない。
   従って、フランス庭園だと言うのだが、最近人気上昇中のフレンチローズが、咲いている風でもなかった。

   この口絵写真は、バラ花壇越しにプラタナスの並木を遠望したものであるが、今、花ッ気があって見栄えのする風景は、このフランス式庭園だけであろう。
   しかし、最も素晴らしいのは、この庭園から、全くオープンなイギリス風景式庭園にかけて、更に新宿門まで広がる真っ青で光り輝いている芝庭である。
   当然、キューガーデンにもない素晴らしい空間で、芝生に寝そべったり、群れたり、車座になったり、やわらかな梅雨の合間の陽を浴びて、憩う人々が多いのもこのあたりで、乳母車を持った幼児連れの若いお母さんたちの小休止のば場もあり、緑と自然とに縁遠い都会人の絶好の憩いの場であろうと思う。

   私は、佐倉城址公園に良く行くのだが、昼の時間には、園内にある国立民族歴史博物館の職員の人たちが、緑陰を散歩しているのを良く見かける。
   ロンドンに居た時も、ビジネスマンたちは、パブで過ごしている人も多いが、そばに、立派な庭園が多いので、寸暇を惜しんで緑の空気と雰囲気を楽しむ人を見ていたのだが、やはり、人間生活にとっては、豊かな緑の空間が、最高の恵みであるのかも知れないと思っている。
   東京のビジネスマンに、皇居一周のジョギングが大人気だと言うのだが、この新宿御苑は、一番緑を必要としているビジネスマンにとっては、休日以外にはアクセス不可能であり、平日4時閉園で、7時でも明るくて気持ちの良い絶好の緑空間を閉鎖して拒否している。
   維持管理の経費が大変だ言うことであろうが、ボランティアを募集するか、雇用促進のために失業者を雇うなどして、夏季の一定期間、入園時間延長で、人々に開放出来ないのであろうか。

   とりとめもないことを考えながら、何時までも鳴り止まない蛍の光のメロディを流し続ける無粋なスピーカーを聞きながら、緑の芝生の絨毯を新宿門に向かった。
コメント
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