熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イングリッシュローズ:ファルスタッフ咲く

2010年06月22日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   イングリッシュローズのファルスタッフが咲いた。
   写真で見た感じとは全く違った濃いピンク色の花弁のびっしり詰まった花で、雨に打たれた所為もあって、首をやや俯き加減に咲いている。
   咲き始めは、普通のバラの花と同じような雰囲気だったが、開くと、典型的なカップ咲きで、コップ状の口に平べったく表面に凹凸なくびっしりと花弁が重なり合って詰まっていて、見慣れているハイブリッドティーの優雅さとは違った味があって面白い。
   もっと開くとロゼット咲きに変化すると言う。

   このバラは、ブッシュタイプで、イングリッシュローズとしては、木立ち性だと言うが、私の鉢植えのこの株は、まだ、4本シュートが出ているだけで、とにかく、花が見たくて咲かせたので、すぐに花と蕾をピンチして、他の枝を出させようと思っている。
   他のイングリッシュローズなどの株もそうだが、肥料を漉き込んで植えつけて、時々、液肥を与えていると、この季節だから、小さな芽を勢い良く伸ばして綺麗な葉を茂らせてくれるのである。

   ところで、この株のラベルもそうだし本などに書かれている和名も、フォルスタッフとなっているのだが、シェイクスピアのFALSTAFFなら、ファルスタッフの方が一般的であろう。
   シェイクスピアと言うよりも、ファルスタッフと言えばヴェルディのオペラの方で有名だが、勿論、シェイクスピアの「ウインザーの陽気な女房たち」がオリジナルで、何度かシェイクスピアに挑戦したヴェルディが、最晩年になって、好色無頼漢のファルスタッフを主人公オペラを書いたと言うのが非常に興味深い。

   実は、私が、イギリスに居て、一番最初に観たシェイクスピア戯曲が、ヘンリー4世二部作で、放蕩王子ハルとその仲間の悪の権化とも言うべき無頼漢のファルスタッフの強烈なキャラクターが、私のシェイクスピアへの誘いであったと言う気がしている。
   いかがわしい居酒屋猪首亭に入り浸っての放蕩三昧の二人だが、世継ぎとなってヘンリー5世に即位すると、一挙に、英邁な理想的な君主に変身したハルは、即刻、フアルスタッフをお払い箱。
   次の「ヘンリー5世」では、昔のよしみで近づくが相手にされず、ファルスタッフは失意の内に死んで行く。
   しかし、その前に、落ちぶれたファルスタッフは、ウインザーに行き、生来の好色振りを発揮して二人の女房に同文のラブレターを書いてモーションを掛けるが、さんざんコケにされ嘲弄されて、川に投げ込まれたり、夜中に森の中に誘われて住民にさんざん痛めつけられて嘲笑されるなど冴えない滑稽な無頼漢・悪党の役回りを演じる。
   これが、人気の高い「ウインザーの陽気な女房たち」であり、ヴェルディの「ファルスタッフ」である。

   しかし、このファルスタッフが、何故、この深くてコクのある優雅な濃いピンクのイングリッシュローズのイメージとなるのか、その意味が理解出来ないのは、私だけではないような気がしている。
   
コメント
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