熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ジャパネットたかた苦境に、そして、チケットのネット予約

2013年03月08日 | 経営・ビジネス
   地上デジタル放送移行や家電エコポイント制度による“テレビ特需”の反動で苦戦が続く家電業界のあおりを受けて、あるいは、スマートフォンの出現でカーナビやデジタルカメラの需要が食われたなどの影響などもあって、ジャパネットたかたは、売上高が低迷している主力の家電販売が落ち込み、2期連続で減収となって苦境に立っている、と産経が報じている。

   しかし、私は、ジャパネットたかたのテレビ販売が落ち込んでいる最大の原因は、ネットショッピングの隆盛に喰われたためだと思っている。
   一度、私自身もジャパネットたかたを使って園芸機器を買ったことがあり、その後、チラシやメールで情報が送られて来ているのだが、調べてみれば、たかたがスペック変更で特注品にして価格が較べられないことも多いのだが、実際には、価格コムの最安値より、大抵高いので、クレジットで買った時に金利ゼロくらいで、ジャパネットたかたで買うべきメリットがそれほどあるわけではない。

   高田社長が、利用者の約8割は高齢者であると言っているように、ITディバイドであるために、若者のように、インターネットを活用できない人が利用者の大半であるから、ネットショッピングの影響は少ないと言えそうだが、しかし、いわば、それで持っていたわけでもあり、商品販売の大勢は、実店舗やカタログ、テレビ販売と言った従来型の発注方式ではなく、インターネットを活用したバーチャル店舗方式に、急速に移行しつつあり、商業システムの革新には絶対に逆らえないであろう。
   ジャパネットたかたも、ネット販売しているが、先に言ったように、必ずしも価格競争力があるわけではないので、苦戦している筈である。

   ところで、顧客に老人が多くて、インターネットを自在に操れないと言った場合で思い出すのは、歌舞伎・文楽・新劇・映画・クラシックと幅広く扱っている芸術芸能鑑賞グループの都民劇場は、絶対に、インターネットによるチケット予約や販売を行っておらず、郵便か電話で総て処理している。
   ぴあやイープラスは勿論、多くの楽団や劇場でもネット予約やチケット手配は、常態となっているのに、都民劇場は、天然記念物のように、インターネットを拒否し続けている。
   ネットで観劇チケットを取得している人間にとっては、不便極まりないのだが、人気舞台や特別公演などになると電話先着予約となるのだが、インターネットだと、メンバーの大半を占める筈の熱心な高齢者顧客が完全に排除されるのは間違いないので、電話が錯綜して中々架からなくても、この方が公平で文句が出ないようなのである。

   たとえば、インターネットによる観劇チケットの予約が如何に熾烈を極めるかを、私が毎月経験している国立能楽堂のチケット取得について説明して見たい。
   国立劇場チケットセンターでのチケット取得だが、一般の人は登録してNIJメンバーとして予約するのだが、ほかに、何らかのプライオリティを取得したあぜくら会や文楽劇場友の会などの入会者がいて、たとえば、あぜくら会のメンバーには、1日早く先行予約が可能である。
   発売日初日の午前10時に、インターネットの予約ページがオープンするのだが、もたもたしていると、1分経つか経たないうちに、チケットの完売表示が画面に現れる。
   恐らく、特別なプロが居たり代理人が沢山いて、一斉にアクセスして一気に席を抑えるのであろうが、15分間は、買うか買わないかは別にして、クリックして抑えた席は維持できるので、そのまま続行して予約を続けて、その中から良い席を買うと言うことのようで、多くの席がブロック状態となり、10時20分くらいになると、抑えたチケットをキャンセルしたり時間切れで放出されることがあり、運が良ければ、チケットを手に入れることが出来る。

   
   本日発売開始になった国立能楽堂のチケットだが、異例にも2公演もある4月特別企画公演の新作能 「スーパー能 世阿弥(すーぱーのう ぜあみ)」だが、恐らく瞬時にインターネット分は完売になったはずで、私もアクセスさえ出来ずに終わって、電話予約でかろうじてチケットを手に入れた。
   明日、一般販売となって、国立劇場チケットセンターやぴあなどでも売り出されるので、その割り当て分は、別に販売されるのだが、とにかく、627席しかないチケットの争奪戦であるから、人気公演となると大変なのである。

   したがって、日本人の殆どが、ICT革命の世の中に慣れて、インターネットを駆使できるようになるまでは、電話やボックスオフイスなどのアナログ的な実店舗は絶対に必要なのであって、そこに、サービス業の生きて行く道はある筈なのである。
   もう一度、ジャパネットたかたのビジネスに戻るが、高田社長は、
   こうした時代の流れを考えて、アパレルや食品を扱うなど家電イメージの払拭を進めて、利用者の約8割である高齢者・シニア向けの新たな提案で市場を作って行きたいと言っているのだが、私など、偶に見るのだが、たかたがテレビで宣伝している商品の殆どは、デジタル家電やデジタル関連商品や近代生活対応の道具や用品であって、シニアが興味や関心を示すものなど殆どないのが現状で、騙されない限り買う筈がない。

   「消費者目線が足りていないと感じている。品質と消費者の価格感覚がマッチングしていない。例えば、これ以上高画質なテレビは必要なのかと。顧客が求める以上の品質の高価格商品が売れ残る現状だ」とも言っているのだが、このことは、このブログでも、4Kテレビを嬉々として宣伝これに努めている家電メーカーの能天気ぶりについて書いたが、これこそが、クリステンセンの持続的イノベーションの落とし穴で、いくら技術の深追いで素晴らしい製品を開発しても、消費者の製品満足度と需要がその水準以下なら、全く無意味であって、開発に入れ込んだ対価は絶対に回収できないと言う厳粛なる事実の証左なのである。

   ジャパネットたかたのICT対応とビジネスモデルの見直しは、起死回生のためにも必須だと思うのだが、もし、80%のシニア顧客を大切にしたいのなら、味気ないデジタル対応ではなく、電話によるバックオフイス対応の質の向上を図るとか、もっともっと、ヒューマンタッチの商業ビジネスの推進に軸足を移して行くべきであろうと思う。

(追記)スーパー能「世阿弥」のチケットだが、念のために、一般発売日の9日の朝10時以降に、国立劇場チケットセンターのページを開けてみたら、昨日のような異常なことはなく、10分くらいは、沢山席が空いていた。熱心なファンなら、大半は、あぜくら会に入会しており、殺到するのだが、一般の人にとっては、能・狂言は、遠い世界の舞台芸術なので、それ程、興味はないと言うことだろう。
しからば、特に、あぜくら会に入ってみても、チケットを割引きで買える程度で、プライオリティ性はないと言うことになろうか。
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