熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ギリシャ経済はどうなるのか

2015年02月07日 | 政治・経済・社会
   昨日のNYTのコラムで、クルーグマンは、”A Game of Chicken”を書いて、ギリシャへの対応に対して、ECBおよびドイツを激しく非難している。
   ドイツが、達成不可能な厳しい緊縮財政を強いてギリシャに債務全額を返済すべく要求するなどトロイカが強硬にギリシャに対し、ギリシャがその遵守を拒否して対抗する・・・正に、猛突進する二者の衝突寸前の激しいチキンレースである。

   ECBやドイツがギリシャに科す過酷な要求を緩めずにプラグを引き抜けば、ヨーロッパの経済のみならず、繁栄をシェアして平和と民主主義を確立すべく努力してきた60年の、ヨーロッパが営々と築き上げて来たすべてのプロジェクトに、甚大なリスクを齎す。ギリシャの銀行が崩壊し、ギリシャがユーロから離脱し、ドラクマに帰る。たとえ、一国がユーロを離脱したとしても、インベスターは、ヨーロッパのグランド通貨デザイン・ユーロが、可逆可能になったと宣告するであろう。
   ギリシャのカオスは、不吉な政治勢力に油を注いで、第二次大恐慌への引き金となリ得る可能性もあり、ギリシャの財務相が、ドイツとの交渉で、1930年代のナチスカードを切ったように、ギリシャでは、ネオナチ政党の”黄金の夜明け”が第三政党に躍り出て、ナチズムが鎌首を持ち上げ始めている。
   と、ヨーロッパが、大変な危機的状況にあると、クルーグマンは警告を発している。

   クルーグマンは、ECBの今回の緊急流動性支援への対応について論じて、ギリシャの為でなくて、ドイツへのウエイクアップ・コールだとして、銀行は、ドイツの債権者の為ではなく、ヨーロッパの経済と民主主義的な組織をセイフガードすべきだと、ドイツの覚醒を説いている。


   また、ロイター電は、”ギリシャ首相「もう命令に従わない」、欧州と対決姿勢”と、”ギリシャのチプラス首相は5日、欧州連合(EU)の緊縮財政政策を永遠に終わらせると表明し、支援プログラムの合意順守を迫る欧州諸国との対決姿勢をあらためて鮮明にした。”と報じている。
   首相や財務相のEU諸国行脚は、実質的には何の成果も得られなかったのであるから、当然の帰結であろう。


   追い打ちをかけるように、時事が、”ギリシャを格下げ=支援交渉難航で―米S&P”と、スタンダード&プアーズが、財政難に陥っているギリシャの国債格付けについて、既に投機的水準である「B」から「Bマイナス」に1段階引き下げ、短期のうちに再度格下げされる可能性もある”と伝えている。
   交渉が長期化すれば預金流出が深刻化し、ギリシャの金融安定性が一段と損なわれるとなり、最悪の場合、ギリシャがユーロ圏を離脱する恐れもあると言うのである。 
   どんどん、ギリシャは、窮地に追い込まれて行く。


   また、日経が、”[FT]ギリシャから距離を置く欧州中銀(社説)”を掲載している。
   ECBが,ギリシャの銀行に対してECBではなく同国の中央銀行から融資を受けるよう求めたことは、ECBが経済戦争を宣戦布告したというよりも、ギリシャの破綻を阻止するか否かの判断から手を引き、代わりに同国の新政権が欧州当局との交渉に取り組むことを表している。ギリシャのユーロ圏での未来は中央銀行ではなく、政治家が決めるべきだからだ。
   
   こうした問題は早急に解決されなくてはならなず、長引けば悲惨な結果を招きかねない。ギリシャの金融システム崩壊を阻止できるかはECBの手の内にある。だが、ギリシャがユーロ圏に残留するかどうかをECBが決める役割を担うべきではない。急進左派連合は有権者の願いを尊重しなくてはならないと言い張るが、ほかのユーロ圏各国政府にも同じ義務がある。
   ECBは今回の行動で、重大な決断は政治家が下すべきだという姿勢を鮮明にした。これは正しい判断だ。各国政府は決断する勇気を奮い起こすべきだ。と言うのである。
   先日も書いたように、ギリシャ問題は、最早、経済問題ではなく、政治問題であり、政治的決着以外に道は残っていないと思っている。
   

   EUの支援提供国には、ギリシャのこれまでの改革努力に一定の評価をして、窮地に立つギリシャの厳しい経済情勢や国民生活の困窮などに鑑み、支援融資の追加減免など援助の可能性があるとしているが、ギリシャが緊縮財政など改革を継続することを要求するなど、更に、関門は高い。
  しかし、それも、限定的なサポートに止まっているようで、チプラス政権が要求しているような大規模な緊縮見直しが認められる可能性は低く、FTが指摘するように、支援提供国の間にも、お家の事情があって、簡単に、ギリシャに譲れない事情があり、安易な妥協や譲歩を行えば、スペインやフランスなど各地で台頭する極左・極右勢力など、緊縮財政反対の政党を、増長拡大させる危険がある。もっと深刻なのは、欧州全土に、改革後退の動きが広がって、デフレ不況に突入しつつある経済情勢をさらに悪化させ、EUそのものの政治経済社会を窮地に追い込む懸念があると言うことである。
   しかし、一方、ギリシャの方も、緊縮財政政策を放棄して公共支出の拡大を図るなど、真っ向からEUの締め付けに反抗して選挙に勝利したギリシャ新政権も、一歩も譲歩しない覚悟で対しており、実際的にも、ギリシャの言い分が認められなければ、クルーグマンが説く如く、ギリシャ自身の命運が危うくなる。正に、熾烈なチキン・レースである。

   ギリシャ危機の原因は、須らく、ギリシャ国家の放漫財政と花見酒の経済運営にあったこと、それに、穿って言えば、EUなりユーロ体制の構造上や運営上の欠陥にあったのだろうが、起こってしまった以上、そして、EUなりユーロシステムが危機と試練に直面してしまった以上、今更、ギリシャを責めても仕方がない、EU全体が協力して解決する以外になかろう。
   




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