熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本経済は成長するも期待以下

2015年02月17日 | 政治・経済・社会
   NYTのジョナサン・ソーブルが、Japan’s Economy Expands, but Less Than Expectedと言う記事を書いている。
   政府の昨年度末四半期のGDP成長率0.6%との発表に基づいてのレポートであろう。
   ロイターの、 実質国内総生産(GDP)は前期比プラス0.6%、 年率換算プラス2.2%となった。3四半期ぶりのプラス成長ながらも、ロイターの事前予測中央値の年率プラス3.7%を下回り、勢いに欠ける結果となった。との報道を受けての記事であろうか。
   Japan emerged from a recession in the final quarter of 2014, but wages, adjusted for inflation, are still falling. と言うことで、インフレ調整後の賃金は依然ダウン基調であり、成長も本物ではないと言うことである。


   ソーブルは、翌日、多少修正してJapan Makes a Quick Exit From Its Latest Recession を書いて、After a midyear slump, the economy started expanding at the end of 2014, but the growth was more tepid than predicted.と、同じようなタイトルを付けた。
   Yet the return to growth was more tepid than experts had predicted and may fail to erase concerns that the economy remains fundamentally fragile, despite Mr. Abe’s two-year stimulus campaign.と、アベノミクスの2年間の刺激策にも拘わらず、日本経済は、期待以下で、根本的には、脆弱なままだと言う指摘である。

   企業や消費者にとっては、原油やエネルギー価格の下落は、好都合だが、
   アベノミクスの効果の過半は、日銀の金融緩和によると見ており、最近のデフレ回帰のために、日銀の更なる債権購入圧力が増す。
   金融コストの低減や円安効果で、トヨタや日立などの巨大製造業の利益アップで業績が向上し株価が上昇する一方、消費増税などの影響で、
    Wages are still falling, adjusted for inflation, and many workers feel left out.と、インフレ調整後の賃金は、下落しており、多くの労働者が、好況から疎外されている。

   ソーブルは、この点を問題にしており、昨日の国会での党首討論で、岡田氏の「アベノミクスは、成長果実を分配する視点が欠落している。」と言う指摘に対して、安倍氏の「頑張れば報われる社会の実現に向け努力する」と応えた格差・働き方論争を、最後に乗せて、記事を終えている。
   この点は、共産党など左派の指摘のみならず、安倍政府も承知の上で、経済界に、賃上げや投資支出の増大などを働きかけており、日本経済の喫緊の課題とはなっている。
   「所得格差の拡大は経済の長期停滞を招く」と言うのは常識だとするならば、アベノミクスは、逆行していると言うことであろうか。

   問題は、成長戦略としてのアベノミクスは、マクロ経済の綜合的な成長戦略であって、その効果や恩恵を、最も強くてその政策をもろに受けて最大限に享受できる強者にとっては良くても、弱者には、殆ど効果がないと言うことである。
   経済が、新興国のように成長基調にある国家経済にとっては、中国やインドのように経済成長の恩恵を受けて多くの最貧困層が豊かになってきたように、トリクルダウン効果が働いて、経済力の底上げと格差縮小効果が働く。
   しかし、日本など経済が成熟段階に入って、経済活力が消失して、経済成長が殆ど望み薄となったような経済では、トリクルダウン効果など消えてしまって、現下のように、弱者が逆にわりを食って、経済格差が、むしろ拡大して行く。

   岡田氏の、「格差を縮めるため、富裕層への所得課税や資産課税の強化のほか、低所得者を対象とした給付月税額控除の検討を求める。」と言う発言に対して、
   安倍首相は「格差の固定化を避けるため、税制や社会保障による低所得者対策、子育て支援の拡充に努める」としながらも「給付付き税額控除については、・・・執行面での対応に課題がある」と応えている。回答になっていない。

   安倍首相が、どう答えようと、また、近年は悪化が進行していなくても、日本の経済格差は、先進国でも、相対的貧困率でもジニ係数でも最悪の部類に入っており、深刻な状態にあることは事実である。
   民主党の言うことは正しいと思うが、「コンクリートからヒトへ」と言う趣旨は正しかったが酷い失政をしたことを思えば、大切な経済成長戦略の推進を怠るであろうから、そのままには受け取れないと思っている。
   、
   Nippon・comが、「日本人の6人に1人が「貧困層」」と言う記事で、
   ”貧困率は、低所得者の割合を示す指標。厚生労働省が2014年7月にまとめた「国民生活基礎調査」によると、等価可処分所得の中央値の半分の額に当たる「貧困線」(2012年は122万円)に満たない世帯の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%だった。これらの世帯で暮らす18歳未満の子どもを対象にした「子どもの貧困率」も16.3%となり、ともに過去最悪を更新した。
   これは、日本人の約6人に1人が相対的な貧困層に分類されることを意味する。この調査で生活意識が「苦しい」とした世帯は59.9%だった。貧困率が過去最悪を更新したのは、長引くデフレ経済下で子育て世帯の所得が減少したことや、母子世帯が増加する中で働く母親の多くが給与水準の低い非正規雇用であることも影響した、と分析されている。”と報じており、その深刻さは、多言を要しないであろう。

   「OECD諸国で4番目に高い貧困率」と、”日本の貧困率は、国際比較で見ても高い。OECDの統計によれば、2000年代半ばの時点でOECD加盟国30か国のうち、相対的貧困率が最も高かったのはメキシコ(約18.5%)、次いで2番目がトルコ(約17.5%)、3番目が米国(約17%)で、4番目に日本(約15%)が続いた。”と言うことで、日本では、給食代を払えない、小学校にも行けないプアー・チルドレンが、沢山存在する。

   アベノミクス効果かどうかはともかく、株や資産の高騰で強者の好景気で、高級品の売れ行きアップを報じている蔭で、取り残された最貧層が、日々の生活に泣いているこの深刻な矛盾。
   安倍内閣の政策は、弱者切り捨てとは言わないまでも、経済的弱者・貧困層に対しては、クールすぎる。
   成長あるべきだとは思うが、日本経済の最も喫緊の課題は、セイフティネットの拡充であり、経済弱者をサポートすることである。
   

   
コメント
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