今年の能楽協会主催の「式能」は、私には4回目になる。
「翁」も、金剛、宝生、金春と、夫々宗家の「翁」を鑑賞し、今年は、観世流清和宗家の「翁」で、2013年9月国立能楽堂開場30周年記念公演初日でも演じられたので、2回目である。
「翁」は、能であり、能にあらず、天下泰平・国家安穏を言祝ぐ能楽の世界では最上位の「神事」。
神聖視されていて、神事能や勧進能など「晴」の催しの時には、まず本曲を演じて後に常の能を演じる決まりで、今回も「翁附き」で、この後、能「西王母」と狂言「大黒連歌」が、休憩なしで連続して演じられた。
演者たちは、その前に、精進潔斎、心身ともに神に臨む心境で対するようで、登場前に、
鏡の間で、設けられた祭壇で、翁・三番叟・千歳・面箱持・囃子方・後見・地謡の順に神酒を頂く儀式を行い、後見が、上演直前に、揚幕の横から手を出して火打ち石で火を切って清めをするのだと言う。
この「翁附の式」は、シテ方は、翁の清和宗家、千歳の喜正、西王母シテ/芳信、など観世流で、
狂言方は、三番三は山本泰太郎、面箱は山本則重、大黒連歌のシテ/東次郎など、山本東次郎家の狂言師たちで演じられた。
厳粛で格調の高い「翁」の崇高さ、
能「西王母」は、エキゾチックな美しい姿の西王母が、桃の実を持った侍女に伴われて登場し、実を帝王(ワキ/殿田謙吉)に捧げて妙なる舞を舞って空に消えて行くと言う神仙思想を現した脇能で、祝祭ムード十分である。
狂言「大黒連歌」は、大黒と言う面をかけて、素晴らしく光り輝く美しい衣装を身に着けて、右手に小槌、左肩に袋を担いだ大黒姿のシテ/東次郎が、大黒思想と連歌の徳とを結びつけたと言う興味深い狂言を見せる。
先日、この能楽堂で、気合の入った凄い「武悪」の主を演じた筈の東次郎が、再び、素晴らしい狂言を見せる、80歳前だと思えない程芸が冴えている、流石に人間国宝である。
この日演じられた能は、続いて、
宝生流の「花月」、シテ/金森秀祥、ワキ/福生茂十郎
金剛流の「吉野静」、シテ/廣田幸稔、ワキ/高安勝久
喜多流の「鬼界島」、シテ/塩津哲生、ワキ/福生和幸
金春流の「葵上」、 シテ/櫻間右陣、ワキ/森常好
「鬼界島」は、他流では「俊寛」であり、この能と「葵上」は、これまでに見ているのだが、「花月」と「吉野静」は初めて観る能であった。
静御前の、法楽の舞や序ノ舞など華麗な舞が、印象的であった。
先日の能「咸陽宮」もそうだが、「鬼界島」「葵上」など、平家物語の能については、後日、感想を書いてみたいと思っている。
狂言は、
和泉流の「舟渡聟」、シテ/三宅右近、アド/則秀、凜太郎
大蔵流の「因幡堂」、シテ/善竹忠重、アド/善竹十郎
和泉流の「成上り」、シテ/野村萬、アド/万蔵、太一郎
これは、総て見ているのだが、流派や家が異なると、芸に差とバリエーションがあって、非常に興味深い。
「舟渡聟」については、このブログでも書いたが、今回は和泉流で、酒を飲まれた船頭が舅であったと言う後バージョンがあるので、面白さが増す。
「成上り」も、先月、この能楽堂で見たのは大蔵流で、清水で通夜した主が預けた大刀を、太郎冠者が仮眠中にすっぱに盗まれたので、苦し紛れに、竹筒に成上ったと言い訳するところで終っているのに比べて、
今回の和泉流では、泥棒のすっぱが、再び獲物を求めて帰って来るのに出くわして、それを捕まえて、すったころんだを3人で演じて、結局は逃げられてしまうと言う話になり、一層面白くなっている。
息子、そして、60も歳の違う孫を相手にして、80を超えた人間国宝で、この主催の能楽協会の理事長である野村萬が、溌剌とした太郎冠者を見せて感激である。
とにかく、朝10時から夕刻の7時過ぎまで、殆ど正味8時間の能6曲、狂言4曲と言う凄く充実した能楽5流派、狂言2流派の芸術の饗宴であった。
楽しませて頂いた。
「翁」も、金剛、宝生、金春と、夫々宗家の「翁」を鑑賞し、今年は、観世流清和宗家の「翁」で、2013年9月国立能楽堂開場30周年記念公演初日でも演じられたので、2回目である。
「翁」は、能であり、能にあらず、天下泰平・国家安穏を言祝ぐ能楽の世界では最上位の「神事」。
神聖視されていて、神事能や勧進能など「晴」の催しの時には、まず本曲を演じて後に常の能を演じる決まりで、今回も「翁附き」で、この後、能「西王母」と狂言「大黒連歌」が、休憩なしで連続して演じられた。
演者たちは、その前に、精進潔斎、心身ともに神に臨む心境で対するようで、登場前に、
鏡の間で、設けられた祭壇で、翁・三番叟・千歳・面箱持・囃子方・後見・地謡の順に神酒を頂く儀式を行い、後見が、上演直前に、揚幕の横から手を出して火打ち石で火を切って清めをするのだと言う。
この「翁附の式」は、シテ方は、翁の清和宗家、千歳の喜正、西王母シテ/芳信、など観世流で、
狂言方は、三番三は山本泰太郎、面箱は山本則重、大黒連歌のシテ/東次郎など、山本東次郎家の狂言師たちで演じられた。
厳粛で格調の高い「翁」の崇高さ、
能「西王母」は、エキゾチックな美しい姿の西王母が、桃の実を持った侍女に伴われて登場し、実を帝王(ワキ/殿田謙吉)に捧げて妙なる舞を舞って空に消えて行くと言う神仙思想を現した脇能で、祝祭ムード十分である。
狂言「大黒連歌」は、大黒と言う面をかけて、素晴らしく光り輝く美しい衣装を身に着けて、右手に小槌、左肩に袋を担いだ大黒姿のシテ/東次郎が、大黒思想と連歌の徳とを結びつけたと言う興味深い狂言を見せる。
先日、この能楽堂で、気合の入った凄い「武悪」の主を演じた筈の東次郎が、再び、素晴らしい狂言を見せる、80歳前だと思えない程芸が冴えている、流石に人間国宝である。
この日演じられた能は、続いて、
宝生流の「花月」、シテ/金森秀祥、ワキ/福生茂十郎
金剛流の「吉野静」、シテ/廣田幸稔、ワキ/高安勝久
喜多流の「鬼界島」、シテ/塩津哲生、ワキ/福生和幸
金春流の「葵上」、 シテ/櫻間右陣、ワキ/森常好
「鬼界島」は、他流では「俊寛」であり、この能と「葵上」は、これまでに見ているのだが、「花月」と「吉野静」は初めて観る能であった。
静御前の、法楽の舞や序ノ舞など華麗な舞が、印象的であった。
先日の能「咸陽宮」もそうだが、「鬼界島」「葵上」など、平家物語の能については、後日、感想を書いてみたいと思っている。
狂言は、
和泉流の「舟渡聟」、シテ/三宅右近、アド/則秀、凜太郎
大蔵流の「因幡堂」、シテ/善竹忠重、アド/善竹十郎
和泉流の「成上り」、シテ/野村萬、アド/万蔵、太一郎
これは、総て見ているのだが、流派や家が異なると、芸に差とバリエーションがあって、非常に興味深い。
「舟渡聟」については、このブログでも書いたが、今回は和泉流で、酒を飲まれた船頭が舅であったと言う後バージョンがあるので、面白さが増す。
「成上り」も、先月、この能楽堂で見たのは大蔵流で、清水で通夜した主が預けた大刀を、太郎冠者が仮眠中にすっぱに盗まれたので、苦し紛れに、竹筒に成上ったと言い訳するところで終っているのに比べて、
今回の和泉流では、泥棒のすっぱが、再び獲物を求めて帰って来るのに出くわして、それを捕まえて、すったころんだを3人で演じて、結局は逃げられてしまうと言う話になり、一層面白くなっている。
息子、そして、60も歳の違う孫を相手にして、80を超えた人間国宝で、この主催の能楽協会の理事長である野村萬が、溌剌とした太郎冠者を見せて感激である。
とにかく、朝10時から夕刻の7時過ぎまで、殆ど正味8時間の能6曲、狂言4曲と言う凄く充実した能楽5流派、狂言2流派の芸術の饗宴であった。
楽しませて頂いた。