さて、「積恋雪関扉」は、古風な味わいを持つ舞踊の大曲ということで、常磐津に合せて演じられる歌舞伎舞踊の演目のひとつで、登場人物は、3人だけ。
初めて観る舞台であったので、興味深かったのだが、史実に沿ったストーリーがあるのかないのか知らないが、筋書は、大略、次の通り。
不遇の最後を遂げた先帝の愛した「小町桜」が咲き誇っている逢阪の関所、そこに蟄居する寵臣・良峯少将宗貞(錦之助)のところへ、都に残してきた美しい姫君姿の恋人・小野小町姫(菊之助)が現れ、関守・関兵衛(幸四郎)が仲立ちして会わせる。
関兵衛が、頭を下げた拍子に懐から「勘合の印」と「割符」を落とすが、これが先帝が陥れられた謀反の鍵を握る品で、関兵衛は慌ててそれを隠すが、二人は怪しむ。
その場を繕って、関兵衛は座を外すが、怪しんだ二人の前に、鷹が飛んで来て、宗貞の弟・安貞の片袖を落としたので、その死を知り、小町姫に、「関を包囲せよ」との伝言を託し都へ向かわせる。
大酒を飲んで酔っ払った関兵衛が、好機到来千載一遇のチャンスと悟って、天下調伏祈願の護摩木を切ろうと、石で大鉞を研ぐ。突然「勘合の印」と「割符」が懐から飛び出し、墨染桜の梢に飛び去ったので、怒った関兵衛は、妖しい墨染桜を切ろうと大鉞を振り上げると、墨染桜からの妖気に当たって気を失う。
突然、美しい小町桜の精(菊之助)が、安貞恋しさに傾城墨染の姿を借りて現われる。
撞木町から来たと言う墨染の手引きで廓遊びの踊りに浮れる関兵衛の懐から片袖を奪って、墨染は、安貞の死を知り涙にくれる。
異常を悟った二人が、互いの素性を迫り、墨染は本性を顕し、関兵衛も、自らが天下を狙う謀反人・大伴黒主であると宣言し、その姿を現す。
恋人を殺し国を滅ぼそうとする大悪人・大伴黒主と小町桜の精は、激しく闘う。
憂いを帯びた傷心の貴公子然とした錦之助、美しくてその優雅さに陶然とさせる菊之助の小野小町と墨染の二役の艶姿、木こり風の小市民的な関守から大悪党然とした黒主に変身する幸四郎の貫録と重厚さ、三人の個性と持ち味を存分に見せた素晴らしい舞台は、正に魅せる舞台である。
それに、この歌舞伎は、見顕し、すなわち、本来の身分や素性を隠している人物が正体を顕す、と言う手法を使っていて、黒主だけではなく遊女墨染も小町桜の精に見顕すという珍しいケースだと言うことであり
その時に、一瞬にして衣裳を替える「引抜」の一種である、上半身の部分を仮に縫ってある糸を抜いて、ほどけた部分を腰から下に垂らして衣裳を替えると言う手法で、早変わりするので、これこそ、歌舞伎の醍醐味でもあって、見ていて楽しい。
とにかく、幸四郎の大悪姿には、何度も接しているのだが、菊之助の見顕しは、初めてであったので、感激して見ていた。
先月の国立劇場の菊之助の舞台も、中々の舞台であったが、この小野小町と墨染の菊之助も、実に、見せて魅せる舞台で、その進境の著しさに、感心している。
「彦山権現誓助剱」は、殆ど記憶にないので、始めて見るようなものだが、毛谷村六助の菊五郎 と、お園の時蔵の舞台で、芝居としては、中途半端に終わっていて、多少物足りないのだが、六助を父の仇だと思って乗り込んできた虚無僧姿のお園が、実は、許嫁であったと知ってからの、いそいそとして嬉しそうな時蔵の変身ぶりが、中々、初々しくて色気があって面白い。
一方、毛谷村に住む百姓ながらも剣術の達人である六助の菊五郎は、朴訥そのものの世話物風の物腰の柔らかさなり、おっとりとした雰囲気がどうに入っていて、時蔵のお園との受答え、掛け合いが、どこかコミカルで面白い。
仇討ちに奮起する純朴な男を描いた名作だと言う触れ込みながら、ストーリー展開が、間接話法の積み重ねで、幕切れが、スタンドバイ風で幕引きをしているので、仇討と言う雰囲気は、あまり、出てこない和事の世界で終っている感じである。
しかし、仇の微塵弾正の團蔵、お幸の東蔵、杣斧右衛門の左團次と言った重鎮が脇役を固めているので、必然的に、重厚な舞台を作り上げていた。
初めて観る舞台であったので、興味深かったのだが、史実に沿ったストーリーがあるのかないのか知らないが、筋書は、大略、次の通り。
不遇の最後を遂げた先帝の愛した「小町桜」が咲き誇っている逢阪の関所、そこに蟄居する寵臣・良峯少将宗貞(錦之助)のところへ、都に残してきた美しい姫君姿の恋人・小野小町姫(菊之助)が現れ、関守・関兵衛(幸四郎)が仲立ちして会わせる。
関兵衛が、頭を下げた拍子に懐から「勘合の印」と「割符」を落とすが、これが先帝が陥れられた謀反の鍵を握る品で、関兵衛は慌ててそれを隠すが、二人は怪しむ。
その場を繕って、関兵衛は座を外すが、怪しんだ二人の前に、鷹が飛んで来て、宗貞の弟・安貞の片袖を落としたので、その死を知り、小町姫に、「関を包囲せよ」との伝言を託し都へ向かわせる。
大酒を飲んで酔っ払った関兵衛が、好機到来千載一遇のチャンスと悟って、天下調伏祈願の護摩木を切ろうと、石で大鉞を研ぐ。突然「勘合の印」と「割符」が懐から飛び出し、墨染桜の梢に飛び去ったので、怒った関兵衛は、妖しい墨染桜を切ろうと大鉞を振り上げると、墨染桜からの妖気に当たって気を失う。
突然、美しい小町桜の精(菊之助)が、安貞恋しさに傾城墨染の姿を借りて現われる。
撞木町から来たと言う墨染の手引きで廓遊びの踊りに浮れる関兵衛の懐から片袖を奪って、墨染は、安貞の死を知り涙にくれる。
異常を悟った二人が、互いの素性を迫り、墨染は本性を顕し、関兵衛も、自らが天下を狙う謀反人・大伴黒主であると宣言し、その姿を現す。
恋人を殺し国を滅ぼそうとする大悪人・大伴黒主と小町桜の精は、激しく闘う。
憂いを帯びた傷心の貴公子然とした錦之助、美しくてその優雅さに陶然とさせる菊之助の小野小町と墨染の二役の艶姿、木こり風の小市民的な関守から大悪党然とした黒主に変身する幸四郎の貫録と重厚さ、三人の個性と持ち味を存分に見せた素晴らしい舞台は、正に魅せる舞台である。
それに、この歌舞伎は、見顕し、すなわち、本来の身分や素性を隠している人物が正体を顕す、と言う手法を使っていて、黒主だけではなく遊女墨染も小町桜の精に見顕すという珍しいケースだと言うことであり
その時に、一瞬にして衣裳を替える「引抜」の一種である、上半身の部分を仮に縫ってある糸を抜いて、ほどけた部分を腰から下に垂らして衣裳を替えると言う手法で、早変わりするので、これこそ、歌舞伎の醍醐味でもあって、見ていて楽しい。
とにかく、幸四郎の大悪姿には、何度も接しているのだが、菊之助の見顕しは、初めてであったので、感激して見ていた。
先月の国立劇場の菊之助の舞台も、中々の舞台であったが、この小野小町と墨染の菊之助も、実に、見せて魅せる舞台で、その進境の著しさに、感心している。
「彦山権現誓助剱」は、殆ど記憶にないので、始めて見るようなものだが、毛谷村六助の菊五郎 と、お園の時蔵の舞台で、芝居としては、中途半端に終わっていて、多少物足りないのだが、六助を父の仇だと思って乗り込んできた虚無僧姿のお園が、実は、許嫁であったと知ってからの、いそいそとして嬉しそうな時蔵の変身ぶりが、中々、初々しくて色気があって面白い。
一方、毛谷村に住む百姓ながらも剣術の達人である六助の菊五郎は、朴訥そのものの世話物風の物腰の柔らかさなり、おっとりとした雰囲気がどうに入っていて、時蔵のお園との受答え、掛け合いが、どこかコミカルで面白い。
仇討ちに奮起する純朴な男を描いた名作だと言う触れ込みながら、ストーリー展開が、間接話法の積み重ねで、幕切れが、スタンドバイ風で幕引きをしているので、仇討と言う雰囲気は、あまり、出てこない和事の世界で終っている感じである。
しかし、仇の微塵弾正の團蔵、お幸の東蔵、杣斧右衛門の左團次と言った重鎮が脇役を固めているので、必然的に、重厚な舞台を作り上げていた。