オリバ―ストーンなみのドキュメンタリータッチの興味深い映画である。
109シネマのストーリーは、要を得て完、これ以上書けないので引用させてもらうと、
1960年代半ば、酒癖の悪い青年チェイニーがのちの妻となるリンに尻を叩かれ政界への道を志す。型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治の表と裏を学んだチェイニーは、次第に魔力的な権力の虜になっていく。大統領首席補佐官、国務長官の職を経て、ジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領に就任した彼は、いよいよ入念な準備のもとに“影の大統領”として振る舞い始める。2001年9月11日の同時多発テロ事件ではブッシュを差し置いて危機対応にあたり、あの悪名高きイラク戦争へと国を導いていく。法を捻じ曲げることも、国民への情報操作も全て意のままに。こうしてチェイニーは幽霊のように自らの存在感を消したまま、その後のアメリカと世界の歴史を根こそぎ塗り替えてしまったのだ。
DISCOVER THE UNTOLD TRUE STORY アメリカの恥ずべき歴史が暴かれる
という凄い映画である。
私は、一般論は知っていたが、保守反動の極めて右に寄った小ブッシュ時代の政策は、やはり、ブッシュ自身のものだと思っていたのだが、この映画を見る限り、ブッシュの存在感は極小で、影の大統領、闇の大統領と言われた副大統領のディック・チェイニーの暗躍で、アメリカの歴史が動いていたと言うことである。
ブッシュのランニングメイトへの懇願を断り続けていたチェイニーが、条件があると言って、お飾りの副大統領としてではなく、やりたいことだけをやりたい、内政問題・人事管理、軍事問題、エネルギー問題、外交問題だ、すべて任せ、と言って、ブッシュの了解を取る。
この映画では、飲んだくれのがしんたれで、エール大学を中退して、妻を泣かせ続けるろくでなしが、海千山千のラムズフェルドに近づいていつの間にか表舞台に立ったように描かれているのだが、
実際には、その後、ワイオミング大学政治学専攻に編入学して、修士を経て、博士課程の時に、ウォーレン・ノールス・ウィスコンシン州知事のスタッフとなり、それが政界入りの切っ掛けになって、ニクソンの大統領次席法律顧問、フォードの大統領首席補佐官となったと言うことで、それなりのキャリアは踏んでいるのである。
映画は、冒頭、ワールド・トレード・センターにボーイングが激突した9.11が勃発して、大統領の許しなしで、独断専行して指示するチェイニーの姿が映し出されているが、アメリカの歴史の歯車が、狂って動き出したのは、正に、この時からで、テロ対策を表看板にして、ありもしない大量破壊兵器の存在をでっちあげて、イラク戦争に突入、
世界最大の石油掘削機の販売会社ハリバートンのCEOであったから、地球温暖化環境問題には一顧だにせず、政治と癒着して、湾岸戦争とイラク戦争で巨額な利益をあげるなど、アメリカ民主主義を大きく右へ急旋回。
私が、アメリカで勉強していた時には、ウォーターゲイト事件で窮地に立ったニクソン大統領の最後の時代で、アメリカの民主主義が危機に直面していた時期でもあり、チェイニーが、表に出て動き始めた時期でもあった。
それ以降、身近にアメリカの政治経済を注視して見ていたのだが、あまりにも、アップダウン、右左、揺れに揺れながら、だんだん、アメリカの国力も落ち気味で、おかしな方向に向かって進んでいるようで心配している。
パクスロマーナ、パクスブリタニカ、パクスアメリカーナ、世界の安定のためには、核となる超大国の存在が必要なのである。
しかし、それさえ、歴史の悪戯で途轍もない方向に急旋回をする、そんなことを、しみじみと感じさせてくれる映画であった。
とにかく、すべて真実だと言うこの映画、登場人物が、当時の歴史上の人物と見まがうほどよく似ており、チェイニーを演じるクリスチャン・ベールは、実に上手い。
監督のアダム・マッケイの限りなき力量発揮の映画でもあろう。
109シネマのストーリーは、要を得て完、これ以上書けないので引用させてもらうと、
1960年代半ば、酒癖の悪い青年チェイニーがのちの妻となるリンに尻を叩かれ政界への道を志す。型破りな下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治の表と裏を学んだチェイニーは、次第に魔力的な権力の虜になっていく。大統領首席補佐官、国務長官の職を経て、ジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領に就任した彼は、いよいよ入念な準備のもとに“影の大統領”として振る舞い始める。2001年9月11日の同時多発テロ事件ではブッシュを差し置いて危機対応にあたり、あの悪名高きイラク戦争へと国を導いていく。法を捻じ曲げることも、国民への情報操作も全て意のままに。こうしてチェイニーは幽霊のように自らの存在感を消したまま、その後のアメリカと世界の歴史を根こそぎ塗り替えてしまったのだ。
DISCOVER THE UNTOLD TRUE STORY アメリカの恥ずべき歴史が暴かれる
という凄い映画である。
私は、一般論は知っていたが、保守反動の極めて右に寄った小ブッシュ時代の政策は、やはり、ブッシュ自身のものだと思っていたのだが、この映画を見る限り、ブッシュの存在感は極小で、影の大統領、闇の大統領と言われた副大統領のディック・チェイニーの暗躍で、アメリカの歴史が動いていたと言うことである。
ブッシュのランニングメイトへの懇願を断り続けていたチェイニーが、条件があると言って、お飾りの副大統領としてではなく、やりたいことだけをやりたい、内政問題・人事管理、軍事問題、エネルギー問題、外交問題だ、すべて任せ、と言って、ブッシュの了解を取る。
この映画では、飲んだくれのがしんたれで、エール大学を中退して、妻を泣かせ続けるろくでなしが、海千山千のラムズフェルドに近づいていつの間にか表舞台に立ったように描かれているのだが、
実際には、その後、ワイオミング大学政治学専攻に編入学して、修士を経て、博士課程の時に、ウォーレン・ノールス・ウィスコンシン州知事のスタッフとなり、それが政界入りの切っ掛けになって、ニクソンの大統領次席法律顧問、フォードの大統領首席補佐官となったと言うことで、それなりのキャリアは踏んでいるのである。
映画は、冒頭、ワールド・トレード・センターにボーイングが激突した9.11が勃発して、大統領の許しなしで、独断専行して指示するチェイニーの姿が映し出されているが、アメリカの歴史の歯車が、狂って動き出したのは、正に、この時からで、テロ対策を表看板にして、ありもしない大量破壊兵器の存在をでっちあげて、イラク戦争に突入、
世界最大の石油掘削機の販売会社ハリバートンのCEOであったから、地球温暖化環境問題には一顧だにせず、政治と癒着して、湾岸戦争とイラク戦争で巨額な利益をあげるなど、アメリカ民主主義を大きく右へ急旋回。
私が、アメリカで勉強していた時には、ウォーターゲイト事件で窮地に立ったニクソン大統領の最後の時代で、アメリカの民主主義が危機に直面していた時期でもあり、チェイニーが、表に出て動き始めた時期でもあった。
それ以降、身近にアメリカの政治経済を注視して見ていたのだが、あまりにも、アップダウン、右左、揺れに揺れながら、だんだん、アメリカの国力も落ち気味で、おかしな方向に向かって進んでいるようで心配している。
パクスロマーナ、パクスブリタニカ、パクスアメリカーナ、世界の安定のためには、核となる超大国の存在が必要なのである。
しかし、それさえ、歴史の悪戯で途轍もない方向に急旋回をする、そんなことを、しみじみと感じさせてくれる映画であった。
とにかく、すべて真実だと言うこの映画、登場人物が、当時の歴史上の人物と見まがうほどよく似ており、チェイニーを演じるクリスチャン・ベールは、実に上手い。
監督のアダム・マッケイの限りなき力量発揮の映画でもあろう。