”この国の過去、現在、そして未来 ”と言うサブタイトルのついたこの本「日本‐呪縛の構図」Japan and the Shackles of the Past (What Everyone Needs to Know)
オックスフォード出版からの依頼であるから、英国紙など、かなり、評価が高い。
外国人の目からの評価であるから、真実かどうかとか、日本人にとって良い本なのかと言うことは、また、別問題であるが、結構、面白いし勉強になる。
マーフィー教授について、筑波大学のHPでは、
グローバル・ノレッジ講座Financial Crises担当で、
財政危機(financial crises )の本質を理解する試みで主に歴史的アプローチ と言うカリキュラムであるから、
大恐慌や日本のバブル経済の崩壊やサブプライム危機など典型的な財政危機を掘り下げながら、ビジネスや投資家が如何に対応すべきか、教えると言うことであろうか。
ハーバード大で東洋学専攻、同大学ビジネススクールのMBAであり、バンカメやチェース・マンハッタンやゴールドマン・サックスで投資銀行家として活躍し、ブルッキングスのシニアフェローを務めたと言うから、象牙の塔の学者と違って、実務にも精通したグローバル経済にも幅広い知見を備えた学者なのであろう。
日本に恋に落ちて在住40年と言うアメリカ人か日本人か分からないような教授で、並みの日本の学者では太刀打ちできないような博学多識を開陳して日本の歴史を紐解いていて、気持ち良いほど爽やかなのだが、やはり、辛口の鋭い外人感覚の日本観が、見え隠れしていて、戸惑いを感じることが結構ある。
専門だとする財危危機、日本の経済については、問題なしとしないので後述するとして、とりあえず、上巻における日本に対する見解で、気になる点、まず、安保問題について、私見を述べてみたい。
江戸時代の鎖国体制から1945年の最後の決死の抵抗に至るまで、日本の歴史は、日本人が、イデオロギー的にも、軍事的にも、経済的にも、外国の支配を受けずに、自国を統治できた時代であったが、それは完全に終止符を打たれた。1945年以降、日本は、占領下に置かれることになった。だが、多くの重要な点で、占領時代はいまだに終わっていないのである。とする叙述である。
また、今日に至るまで、アメリカは日本のために、普通の独立国なら、当然自分の判断で行うべき活動を肩代わりし続けている。安全保障の確保と外交である。占領が正式に終了した後も、日本が真の意味で主権を回復できていないことは、日本の左右陣営のどちらにとっても不愉快な現実だ。と述べている。
問題の根源は、サンフランシスコ講和条約にもあるようだが、1960年の安保条約改定によって、一方の破棄予告がない限り、自動的に延長されることが定められ、これによって、日本は実質的にアメリカの永続的な従属国であることが成文化されたのである。アメリカは引き続き、日本全国に散らばる米軍基地に無制限のアクセスを許可され、基地の維持費用も日本政府が負担する。
・・・新安保条約は、日本がもはやアメリカの植民地ではないことを明確にしたかもしれない。だが、率直に言って、決して対等な「同盟国」と認められたわけではない。・・・日本は、どちらかと言うと「保護国」に近い存在で、国内のことは自由裁量に任されているが、安全保障と外交の問題に関してはいまだにアメリカの指示に従うことを義務付けられているのだ。その従属関係を維持するためのコストは、日本が負担しなければならない。と述べている。
このような日米関係については、ジョン・ダワーの著作を読めば、もっと、強烈な表現で明確に記述されているのだが、おそらく、アメリカ人の知識人の一般的な見解であろうし、アメリカ人の対日本人観であるような言う気がしている。
問題は、このようなアメリカ人の見解、日本がアメリカの保護国に近い従属国だと言う見解と、日本が立派な独立した世界有数の先進国だと考えている誇り高き一般日本人との考え方感じ方との大きなズレである。
そう思えば、日本での基地問題や沖縄問題での対応が、如何にピント外れか。
私は、以前に、自分の国を自分で守れないような国は、真の独立国とは言えないと思うと書いたことがある。
必ずしも、著者の見解を良しとして肯定するつもりはないが、戦後70年を経た今でも、アメリカの核の傘に保護されて、太平天国に安穏としていることに疑問を感じており、真の独立を確立するためにどうすれば良いのか、考え続けている。
私自身、アメリカで学び、米国製のMBAであるので、アメリカには、一宿一飯の恩義を感じており、アメリカそのものを否定するつもりはない。
しかし、トランプのアメリカ・ファーストが明確に示すように、国力を急速に低下させて覇権国の地位を失いつつあるアメリカに頼り切り、著者が説くように、独立国の独立国の由縁である安全保障と外交までも、従属し続けざるを得ないとするなら、日本の活路はどこにあるのか、心配している。
また、世界第5位だと言われる軍事大国(?)日本にとって、このようなことが、現実だとするのなら、安全保障と外交の問題は言うに及ばず、沖縄の問題を根本的に見直して、普天間基地や辺野古移設の問題も、このままで良い筈がなく、真剣に再考すべきだと思っている。
マーフィー教授のこの本は、現実を直視せよと教えてくれたような気がしている。
オックスフォード出版からの依頼であるから、英国紙など、かなり、評価が高い。
外国人の目からの評価であるから、真実かどうかとか、日本人にとって良い本なのかと言うことは、また、別問題であるが、結構、面白いし勉強になる。
マーフィー教授について、筑波大学のHPでは、
グローバル・ノレッジ講座Financial Crises担当で、
財政危機(financial crises )の本質を理解する試みで主に歴史的アプローチ と言うカリキュラムであるから、
大恐慌や日本のバブル経済の崩壊やサブプライム危機など典型的な財政危機を掘り下げながら、ビジネスや投資家が如何に対応すべきか、教えると言うことであろうか。
ハーバード大で東洋学専攻、同大学ビジネススクールのMBAであり、バンカメやチェース・マンハッタンやゴールドマン・サックスで投資銀行家として活躍し、ブルッキングスのシニアフェローを務めたと言うから、象牙の塔の学者と違って、実務にも精通したグローバル経済にも幅広い知見を備えた学者なのであろう。
日本に恋に落ちて在住40年と言うアメリカ人か日本人か分からないような教授で、並みの日本の学者では太刀打ちできないような博学多識を開陳して日本の歴史を紐解いていて、気持ち良いほど爽やかなのだが、やはり、辛口の鋭い外人感覚の日本観が、見え隠れしていて、戸惑いを感じることが結構ある。
専門だとする財危危機、日本の経済については、問題なしとしないので後述するとして、とりあえず、上巻における日本に対する見解で、気になる点、まず、安保問題について、私見を述べてみたい。
江戸時代の鎖国体制から1945年の最後の決死の抵抗に至るまで、日本の歴史は、日本人が、イデオロギー的にも、軍事的にも、経済的にも、外国の支配を受けずに、自国を統治できた時代であったが、それは完全に終止符を打たれた。1945年以降、日本は、占領下に置かれることになった。だが、多くの重要な点で、占領時代はいまだに終わっていないのである。とする叙述である。
また、今日に至るまで、アメリカは日本のために、普通の独立国なら、当然自分の判断で行うべき活動を肩代わりし続けている。安全保障の確保と外交である。占領が正式に終了した後も、日本が真の意味で主権を回復できていないことは、日本の左右陣営のどちらにとっても不愉快な現実だ。と述べている。
問題の根源は、サンフランシスコ講和条約にもあるようだが、1960年の安保条約改定によって、一方の破棄予告がない限り、自動的に延長されることが定められ、これによって、日本は実質的にアメリカの永続的な従属国であることが成文化されたのである。アメリカは引き続き、日本全国に散らばる米軍基地に無制限のアクセスを許可され、基地の維持費用も日本政府が負担する。
・・・新安保条約は、日本がもはやアメリカの植民地ではないことを明確にしたかもしれない。だが、率直に言って、決して対等な「同盟国」と認められたわけではない。・・・日本は、どちらかと言うと「保護国」に近い存在で、国内のことは自由裁量に任されているが、安全保障と外交の問題に関してはいまだにアメリカの指示に従うことを義務付けられているのだ。その従属関係を維持するためのコストは、日本が負担しなければならない。と述べている。
このような日米関係については、ジョン・ダワーの著作を読めば、もっと、強烈な表現で明確に記述されているのだが、おそらく、アメリカ人の知識人の一般的な見解であろうし、アメリカ人の対日本人観であるような言う気がしている。
問題は、このようなアメリカ人の見解、日本がアメリカの保護国に近い従属国だと言う見解と、日本が立派な独立した世界有数の先進国だと考えている誇り高き一般日本人との考え方感じ方との大きなズレである。
そう思えば、日本での基地問題や沖縄問題での対応が、如何にピント外れか。
私は、以前に、自分の国を自分で守れないような国は、真の独立国とは言えないと思うと書いたことがある。
必ずしも、著者の見解を良しとして肯定するつもりはないが、戦後70年を経た今でも、アメリカの核の傘に保護されて、太平天国に安穏としていることに疑問を感じており、真の独立を確立するためにどうすれば良いのか、考え続けている。
私自身、アメリカで学び、米国製のMBAであるので、アメリカには、一宿一飯の恩義を感じており、アメリカそのものを否定するつもりはない。
しかし、トランプのアメリカ・ファーストが明確に示すように、国力を急速に低下させて覇権国の地位を失いつつあるアメリカに頼り切り、著者が説くように、独立国の独立国の由縁である安全保障と外交までも、従属し続けざるを得ないとするなら、日本の活路はどこにあるのか、心配している。
また、世界第5位だと言われる軍事大国(?)日本にとって、このようなことが、現実だとするのなら、安全保障と外交の問題は言うに及ばず、沖縄の問題を根本的に見直して、普天間基地や辺野古移設の問題も、このままで良い筈がなく、真剣に再考すべきだと思っている。
マーフィー教授のこの本は、現実を直視せよと教えてくれたような気がしている。