アリス・H・アムスデンの「帝国と経済発展」を読んでいて、興味を持ったのは、
”絶対主義に対する脅威が、上から、つまり帝国主義からではなく、下から、つまりキャッチアップしようとする途上国から生じたのは、現代史上二回目のことであった(一度目はヴェトナム戦争であった)。と言うくだりである。
ヴェトナムのアメリカに対する勝利(?)は、暫くおくとして、注目すべきは、中国やインドの台頭が、アメリカの絶対的権力の喪失の背後にある直接の意味だとするアムスデンの見解である。
尤も、中国の歴史などを紐解いても、未開の民族が中華王朝を駆逐するなど、史上、下から絶対権力に挑戦した例は、いくらもあるのだが、アムスデンは、この本ではアメリカ帝国の話をしているので、これで良いのであろう。
欧米文化に関しては、ギリシャ、ローマから西欧、イギリス、アメリカへの絶対権力の移行においては、ほぼ、多少の落差はあっても、同程度の文化文明間の権力の移行と考えられるということであろう。
中国の優位は、爆発的な成長率と、今か今かと前進の機会を待っている人民にあると言う。
中国の雇用増大と貧困削減は誇り得るもので、極めて高い貯蓄率、能力主義の試験制度で選ばれた官僚、起業家精神にあふれた大企業グループがあり、将来の巨人によって称賛の的となる成長モデルだとも言う。
尤も、アメリカの持てる総合力は、中国など及びもつかない程強大なのだが、アムスデンは、ほぼ手放しで中国の将来を楽観視しており、アメリカ帝国への挑戦だと見ている。
平和を所与とすれば、米中間で今後問題となるのは、市場の支配である。と言うのだが、私自身は、現下において、中国の場合、問題となるのは、ボリュームだけであって、経済産業構造を考えただけでも、経済は勿論、政治も含めたグローバルベースでの覇権力で、アメリカを凌駕するなど考えられないと思っている。
いずれにしろ、同じ文明国で先進国のヨーロッパや日本ではなく、中国やインドなどの下から追い上げてくる新興国によって、挑戦を受け、脅威を感じざるを得ないと言う現実が、アメリカにとっては深刻なのであろう。
どう考えても、文化文明的にも、経済的にも、対戦相手ではあり得なかった筈のヴェトナムに翻弄されて、国家の屋台骨まで崩されてしまったアメリカ人の恐怖は、すい星のように勃興してきた、それも、人口が一桁も上の巨大な中国やインドに、猛烈な勢いで追い上げを食っているのであるから、安閑としておれないと言うのであろう。
今度の巨人は、ヴェトナムのような小国ではなくて、途轍もなく巨大な中国とインドであるから、尚更である。
アムスデンは、この本で、帝国を凌駕して発展して行く新興国の経済発展を論じているので、この中国やインドの絶対主義に対する追い上げの脅威は、
世界が、おそらくもっとも良い方向に真の変化を遂げている。
と結論付けているのだが、果たしてそんなに簡単なものなのか、興味深い問題提起だと思っている。
”絶対主義に対する脅威が、上から、つまり帝国主義からではなく、下から、つまりキャッチアップしようとする途上国から生じたのは、現代史上二回目のことであった(一度目はヴェトナム戦争であった)。と言うくだりである。
ヴェトナムのアメリカに対する勝利(?)は、暫くおくとして、注目すべきは、中国やインドの台頭が、アメリカの絶対的権力の喪失の背後にある直接の意味だとするアムスデンの見解である。
尤も、中国の歴史などを紐解いても、未開の民族が中華王朝を駆逐するなど、史上、下から絶対権力に挑戦した例は、いくらもあるのだが、アムスデンは、この本ではアメリカ帝国の話をしているので、これで良いのであろう。
欧米文化に関しては、ギリシャ、ローマから西欧、イギリス、アメリカへの絶対権力の移行においては、ほぼ、多少の落差はあっても、同程度の文化文明間の権力の移行と考えられるということであろう。
中国の優位は、爆発的な成長率と、今か今かと前進の機会を待っている人民にあると言う。
中国の雇用増大と貧困削減は誇り得るもので、極めて高い貯蓄率、能力主義の試験制度で選ばれた官僚、起業家精神にあふれた大企業グループがあり、将来の巨人によって称賛の的となる成長モデルだとも言う。
尤も、アメリカの持てる総合力は、中国など及びもつかない程強大なのだが、アムスデンは、ほぼ手放しで中国の将来を楽観視しており、アメリカ帝国への挑戦だと見ている。
平和を所与とすれば、米中間で今後問題となるのは、市場の支配である。と言うのだが、私自身は、現下において、中国の場合、問題となるのは、ボリュームだけであって、経済産業構造を考えただけでも、経済は勿論、政治も含めたグローバルベースでの覇権力で、アメリカを凌駕するなど考えられないと思っている。
いずれにしろ、同じ文明国で先進国のヨーロッパや日本ではなく、中国やインドなどの下から追い上げてくる新興国によって、挑戦を受け、脅威を感じざるを得ないと言う現実が、アメリカにとっては深刻なのであろう。
どう考えても、文化文明的にも、経済的にも、対戦相手ではあり得なかった筈のヴェトナムに翻弄されて、国家の屋台骨まで崩されてしまったアメリカ人の恐怖は、すい星のように勃興してきた、それも、人口が一桁も上の巨大な中国やインドに、猛烈な勢いで追い上げを食っているのであるから、安閑としておれないと言うのであろう。
今度の巨人は、ヴェトナムのような小国ではなくて、途轍もなく巨大な中国とインドであるから、尚更である。
アムスデンは、この本で、帝国を凌駕して発展して行く新興国の経済発展を論じているので、この中国やインドの絶対主義に対する追い上げの脅威は、
世界が、おそらくもっとも良い方向に真の変化を遂げている。
と結論付けているのだが、果たしてそんなに簡単なものなのか、興味深い問題提起だと思っている。