先日行った国語の公開授業。
授業を考えるテーマとして与えたのが、
「いったい『やまなし』の中で宮沢賢治が表したかったことは何なのか?」
という、小学生にとっては困難な課題でした。
これを考えるためには、『やまなし』を熟読することはもちろん、賢治の人生や思想性、人間関係や時代背景ということまで知識として持っていなくてはなりません。ところが今回の授業、『平和のとりでを築く』という授業を『やまなし』と順番を変えて先に行ったことや、社会でちょうど戦争の時代を学んでいること、教室の中に川底をイメージできる水槽を用意したことなどが大きな土台となって、子どもたちの脳内にはたくさんの知識が蓄えられていました。
とは言えども小学生、まだまだ知識の偏りがありますから、子ども達の頭の中で形成した意見も偏りはあります。大事なことは正解を求めることではなくて、与えられた条件の中で、自分なりの意見を形成することです。これが次の学びへの動機付けとなります。
さて、子ども達に10分間で授業の感想を書いてもらいました。
それを掲載した上で、授業分析をしていくつもりです。
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【自然のことを表現したという意見】
〔グッチーさん〕
僕は「やまなし」を読んで、最初は理解できませんでした。だけど、物語の中で、とても幻想的な言葉がありました。僕は、宮沢賢治が川がきれいだということを伝えたいのだと思いました。
この物語で登場する生き物は、かにの兄弟とかにのお父さんなどが出てきます。このかにの兄弟が遊んでいる時にかわせみがきて、魚をおそった時は怖いなぁと思いました。
〔エリンギさん〕
宮沢賢治はこの「やまなし」で、何を読者に伝えたかったのかなと思いました。
宮沢賢治が書く詩や物語には共通な点があることに気がつきました。それは、『自然』です。「やまなし」では、平和な川の中を書いていて、「雨にも負けず」という詩では、雨や風、雪、木など自然の言葉が入っていました。
宮沢賢治は生まれたころから、災害が続いていたので、『平和な自然』というのを理想に思って、自然のことを詩や物語で伝えたかったのかなと思いました。
あと、賢治は「クラムボン」や「イサド」のように、現実には存在しない言葉や生き物を作ってしまう発想がすごいなと思いました。
〔コナンさん〕
ぼくは本当に自然を愛していた人だと思いました。「やまなし」という作品は読んでくれた人に自然を伝えたかったのではないかと思います。賢治が言った「イネの心が分かる人間になれ」というのも、じょうだんじゃなくて真面目に言っていると思いました。
「やまなし」は全部が自然のことで、戦争なくして自然を好きになれと言いたかったんだと思います。賢治という人は自然のことだけではなく、人のことも考えている人なんだと思います。「やまなし」にかなりの工夫が入っていると思います。その工夫を知るためには、もっともっと読むしかないと思いました。
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〔分析①〕
この意見は「やまなし」の文中から感じた自然描写、さらに「イーハトーブの夢」という文章から読み取った賢治の自然に対する考え方、時代背景などを参考にして自分の意見を形成しています。
そして、コナンさんが書いている「もっともっと読むしかない」という言葉で、この単元のねらいであった「賢治の他の作品も読んでみたいという動機付けにする」という項目も達成していることが分かりました。