授業は釣りと似ているという考え方

昨日、6年の先生に「やまなし」の授業について相談を受けました。その際に、偶然私の中から出てきたアイデアが、自分としても腑に落ちるものだったので、忘れないうちに書き残しておこうと思います。

授業は、「この1時間の授業をどうしよう」と考えてしまうとうまくいかないものだと思います。「やまなし」を10時間で指導するなら、この10時間をどうさい配して、最終ゴールにたどり着くかという見通しをもっていないといけません。


この授業の流れを「釣り」に喩えてみました。

釣りの目標は「ねらった魚を釣り上げる」ということです。そのためにいろいろな仕掛けをします。どんな竿を使うのか、どんな糸や針を使うのか、エサは何がいいのか、場所はどこがいいのかなど、工夫に工夫を重ねて大物をねらいます。時には無駄になる「撒き餌」をする必要もあるでしょうし、獲物によっては大きな網や銛(もり)などが必要になるでしょう。
釣りをしている最中には、釣り糸周辺に眼を向けながら、じっと待っているわけですが、釣り人は動かないけれども、波や水の色、雰囲気などの集まってくる情報を敏感にキャッチしてねらい通りに釣り上げていきます。


授業もこれに似ています。

10時間の授業の間、最初の1時間目から大物をねらっていくのではなく、子どもたちに撒き餌をします。その撒き餌とは、「宮沢賢治って面白そうだな」「やまなしって不思議だな」「クラムボンって何だろう」「他の作品も読んでみようかな」という興味を湧きあがらせる撒き餌です。子どもたちを主教材文に食いつかせるための仕掛けを工夫するのです。

次に、毎回の授業で、最終目標のねらいに向かって、子どもたちを追い込んでいくのです。それも子どもたちが知らず知らずのうちに追い込まれている状況にすることが大事です。魚釣りも同じですね。魚が気づかないうちに岩場に追い込まれ、もう逃げられない状況の中にいることにも気づかない。そんな瞬間に「天井の光」の中から、最高においしそうな餌がゆらゆらと降りてくる。魚は喜んで食いつきます。


では、子どもの追い込み方はどのようにしたら良いのでしょうか?

担任という釣り師は、高性能の「言葉レーダー」を持っている必要があります。そのレーダーで何をキャッチするのかといいますと、子どもたちの「声」をつかまえ、拾い上げるのです。

授業の中では様々な声が発せられます。

「発言」「つぶやき」「質問」「話し合い」・・・この辺からは良い情報が発信されることが多いです。

「私語」「周りとのおしゃべり」「ひそひそ話」「勝手な発言」「笑い声」・・・こうした声は授業にマイナスな要素が多くなります。

そして、授業を最高レベルに引き上げてくれるのが子どもの「心の中のつぶやき」です。これを拾うのは最高難度の教師技術です。心の声は子どもたちの態度に顕れます。学んでいる「姿勢」に顕れますし、「目の輝き」にも顕れます。「心のつぶやき」を拾えるようになったら一人前の教師になったといって良いでしょう。

こうして授業を本時の成功に向かって突き進ませてくれる「声」を確実にキャッチし、じょうずに拾い上げ、クラス全体の財産として貯金していく。たくさんの貯金があると、そこに大きな利子がついてきます!そんなふうに膨らんだ貯金を山場の1時間で一気に使ってしまいましょう。

このようなイメージで授業をしていくことによって、場当たり的な指導から抜け出すことができるようになります。


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