地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

広州~九龍「直通車」を新界で撮る

2011-05-01 00:11:00 | 中国の鉄道


 広州と深センの間に和諧号CRH1が登場して以来、途中深センでの徒歩越境を含んでも広州~香港間を2時間半少々で移動できるようになっており (空いている場合)、次から次へと列車がやって来ることによる時刻表要らずな時代の到来によって、広東省と香港を結ぶ交通は大幅に強化されたかの感があります。とは言え、やはりボーダーや深セン駅での階段の上り下りは面倒であることも否めません。
 そこで、広州と香港の間をダイレクトでラクに移動したい向きには、客車列車で運行されている広州~九龍直通列車(広九[城際]直通車と呼ばれています) がオススメ。編成構成は、大陸持ち編成が一等車のみ、香港持ち編成 (時刻表では「九広通」と表記) が特等と一等の二種となっており、運賃は特等が香港ドル230元、一等が同190元。和諧号CRH1と東鉄線電車を乗り継ぐ場合と比べ、運賃は香港ドルで60元以上余計にかかり、乗車時間も2時間 (+広州東駅と紅磡駅でのイミグレーションに要する時間) ということで決して速くはありませんが、とにかく快適でラクであることは断言出来ます。



 そんな広九直通車ですが、近い将来には広州~香港をダイレクトに結ぶ新幹線を建設する計画があるようで、それが完成すれば消える運命……。まぁ、中国鉄道省の前トップが汚職で逮捕され、中国高速鉄道網をめぐるイケイケドンドン政策が大幅に修正されつつあるようですし、既に広州と深センの間に和諧号用の新線も存在する以上、香港までもう1本高速新線を造る必要があるのか?という批判とともに建設が中止となることも考えられます。とはいえ、香港という場所を中国からみれば、「イギリス帝国主義から取り返した、神聖なる祖国の統一を維持する象徴」でもある以上、意地でも採算度外視で建設する可能性あり……。
 というわけで、如何にもベッドタウンを行く近郊鉄道という雰囲気が漂う香港の東鉄線内で、突然場違いな (?) 客車列車が現れるシーンを激写するのも今のうちかも知れません。あるいは、客車列車を止めて和諧号CRHなどEMU・DMUによる運行に改められるとしても不思議ではありませんので (以前も一時期、一部列車が「新時速」なるEMUによって運行されていたようですが、何故オール客レに戻ったのかは不明)、興味のある方はお急ぎを。急ぐ必要がないに越したことはありませんが。
 今回はとりあえず、CRH1を観察したのち午後2時半過ぎに香港側に戻り、「そういえばそろそろ直通車が来る頃だなぁ……」ということで某駅にて待ち構えたのですが、電車を追い抜くことが出来ず性能を完全に持て余しまくりな韶山8型[※1]+25K系客車がノッソリと接近するシーンに「をを~、5扉電車が頻繁運転する路線に客レが現れる違和感、何とも言えないのぉ~」とニンマリ (^^;)。欲を言えば、1970年代末に登場し、世界最貧国のひとつであった当時の中国では破格の豪華さを誇った初代の「直通車」用車両・東風4型DL[※2]+初期型RZ25客車が現役で使用されていれば狂喜乱舞モノですが (私が1995年に初めて直通車に乗った際にはこの編成でした……遠い目)、今や初期型RZ25は第一線を退き、広東省周辺の短距離列車などに連結されて余生を送っているようですので、まぁムリか……。
 その後もうしばらく撮り鉄しておりますと、今度は牽引機こそ同じ韶山8型であるものの、客車は豪華な軟臥車ばかりの25T系 (2枚目)! この列車は北京西・上海南との間をそれぞれ隔日運転で結んでいる長距離列車であり、出入境手続は始発・終着駅で行うため、途中駅で機関車を付け替える等の目的で停車時間が設定されているとしてもホームに出ることは不可というシロモノ (汗)。北京・上海と香港の間は飛行機の便が頻繁にありますので、この列車はもっぱら安いツアー御用達の感があるようですが、出来れば高級軟臥車を1部屋貸し切って乗ってみたい気もします。

[※1]韶山=毛沢東の故郷。中国の国産交流ELが長らく名乗ってきた形式名。
[※2]東風=「東風 (社会主義) は西風 (資本主義) を圧する」という往年のスローガンに由来。中国国産電気式DLが長らく名乗ってきた形式名。