地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

ハノイ懐旧鉄散歩 (10) ミニおろしゃ罐D4H

2012-05-03 00:00:00 | ベトナムの鉄道


 ベトナム訪問シリーズ、とりあえず標準軌路線に今なお生きる満鉄客車を訪ねるレポートにつきましては完結しましたので、今回からはメーターゲージ用のDL各種と、それらが牽引する列車の魅力(?)にスポットライトを当てて行きたく存じます。具体的には、ベトナムのDLは導入した順に形式名が付されているようですので、その順に従って紹介して参りますが、何せ情報が少ない世界ですので、基本的にはベトナム国鉄と関係が深いオーストラリア人が運営していると思われるサイト『Railways In Vietnam』における機関車紹介を参考にしていることを申し添え、当該サイトにはこの場ながら(そして日本語ながら ^^;)心より御礼申し上げます。
 というわけで一発目は、現役DL最古参と思われるD4H。Dはそのものズバリ、ディーゼルを意味し、HはHydrogen=液体式を意味しています(HではなくEであれば電気式)。随分と華奢で「かわいい」とすら思える車体に、どこかコメコン計画経済チックな雰囲気をプンプン漂わせているこのDL、たしかに出自はソ連のメーターゲージ森林鉄道用として1970年代から生産されているものとのことで、ベトナムにはまだまだソ越蜜月(ベトナム戦争から時間が経っていないため米国とはまだ疎遠。米中国交回復やポト派問題以来の中越大決裂のため、ベトナムはまさに「向ソ一辺倒」)・コメコン全盛(?)であった1980年代半ばに100数十両が入って来たようです。このため、ベトナム各地で入換機として多数健在のようで、ハノイ界隈でもダークグリーンに黄帯という如何にも「社会主義建設☆」と言わんばかりの出で立ちで動いています。



 そんなD4H、如何にも貨車や客車を2~3両牽けばヘタってしまいそうな風貌ですが、出自が森林鉄道用ということで意外とパワーもあるようで、私が今回主な撮影ターゲットとしたロンビエン(龍辺)橋以北のエリアにおいては、何と通常の定期旅客列車を牽引していました (汗)。その列車は、ハノイの北70数km・タイグエン(太原)省クアンチューと、ハノイ旧市街・ロンビエン(龍編)駅の間を結ぶ「QT91/92」列車。
 ハノイ~タイグエン間の路線は、基本的にタイグエンの製鉄所にからむ貨物輸送がメインのようで、旅客列車はこの「QT91/92」の一往復のみという、首都近郊の路線にあるまじき超過疎ぶりとなっていますが、実際の運行時刻も午前中にクアンチューからロンビエンに到着、一旦ロンビエンからザーラムに引き返して昼寝(及び検査車両の差し替え)、午後ザーラムからロンビエンに回送のうえロンビエンからクアンチューまで客扱いして終了……という、まさに悠長そのもの。ハノイからの日帰り往復は、列車のみを使うのであれば絶対に不可能というトホホぶりです(苦笑)。もし列車利用での日帰り往復を試みるのであれば、早朝ハノイからクアンチューにタクシーを飛ばすか、旅行会社に依頼して夕方クアンチュー駅にタクシーを待たせるしかないですが、私はまずやらない……ですね (^^;)。クアンチューの手前、タイグエンは省都&製鉄所の街で、多分宿もあると思われますので、SLが動いているといわれる製鉄所専用線と組み合わせるのも一興かも知れませんが、そもそも製鉄所専用線の撮影が可能なのかどうかも分かりませんので悪しからず (^^;)。ハノイ~タイグエン間のバスは、ザーラムBTからそれこそジャンジャン走っているはずですので、フツーの客はバスを使うということなのでしょう。
 では、何故これほどまでに使いづらい列車が毎日1往復運転されているのか……。個人的予想ですが、「時間が合い、急がず、お安く行きたい方はどうぞ」という以上に、この列車が行商列車としての性格を極めて強く帯びているからではないかと思われます。ロンビエン駅の北、ロンビエン橋の脇には青果や肉・魚を扱う青空生鮮市場があり(とくに肉を売っているあたりは衛生状態が極めて悪く、鳥インフルエンザの温床臭いですので、橋から見下ろす分には面白いですが直接行くのはオススメできません)、ロンビエン駅の南側も雑貨等を扱う古くからの市場町ですので、そんなロンビエン界隈と農村地帯を往復する行商人にとっては不可欠の列車なのでしょう。というわけで、傍目で見ていますと、超デコボコな客車6両のうち一般客用はせいぜい2両で、残りは全て行商用客車 (汗)。まぁ、こんな如何にも前時代的なデコボコ列車が首都の一端を走っているということ自体が、ベトナムの鉄道の奥深さでもあるのでしょう。