ベトナムのDLは、最新鋭機D19ErやD20E (それぞれ中国南車・シーメンス製。ハノイ以南の統一鉄道に投入されているようで、ハノイ以北に注力した今回は撮っていません)を除けば、総じて実用一点張りなゴツいデザインである場合がほとんどです。しかし、中にはとんでもなく気合いが入って前衛的なつもりが中途半端な出で立ちとなってしまい、それゆえに大いにブッ飛びものであるというナゾな罐も存在します。それが……驚異のモスラ罐・D8E! (*^O^*)
この、一度見たら絶対に忘れないスゴいデザインの持ち主は、恐らくドイツのICEあたりのデザインを夢に見つつ、何とベトナム・ザーラム工場がゼロから製造したものということで、したがってベトナム唯一の現役国産DLとされています。車体のどこをどう見ても、とりわけ連結器カバーの周辺は既にベコベコ・ボロボロですが、これまた何と21世紀に入ってからの製造とか! 当初の構想としては、中間に同じ白地+朱色帯の最新鋭冷房客車を挟み、2台のD8Eでプッシュプル運転するはずだったそうですが、余り芳しい性能や成果を得られなかったためか、結局このDLは試作車2両しか製造されず、さらにうち1両が故障→放置の運命をたどって久しいため、現役車はこの1両のみ……。
したがって、思わず「モスラ」と勝手に名付けてしまいたくなるユーモラスな風貌のこの罐は、実は何気に珍車の中の珍車でもあり、総延長2000km以上に及ぶベトナム国鉄の何処を走っているか全く見当もつかず、もし遭遇出来ればとてつもなくラッキーであるとしか言い様がありません。というわけで今回の訪問にあたっては、日本からハノイに到着したその日まで、まずこの超珍車怪物罐に当たることはないだろう……と、ほとんど期待していなかったのでした。
しかーし!人間往々にして無欲であればあるほど、とてつもない大当たりに遭遇するものです♪ 到着翌日の午前中、とりあえずザーラム界隈にやって来る列車を片っ端から(と言っても回送を含めて30~40分に一回程度しか撮影出来ませんが……)撮影していたところ、中国との国境の街・ドンダン(同登)からやって来た急行列車「M4」の牽引機が何とモスラで登場!! v(^O^)v
停車駅が少ない急行といいながら、現実にはバスに客を取られてしまい、旅客用客車よりも行商用客車や荷物車代用貨車の比重の方が高いという、何ともうらぶれた雰囲気のデコボコ列車が、恐らく夢のPP特急列車用として製造されながらも既にボロボロになってしまったモスラ罐に牽引されているという光景は、見方によれば凋落の一途をたどるベトナム国鉄ハノイ以北の厳しい現状そのものであるのかも知れません。それでも趣味的に見ますと、これほど愉快痛快な列車はそうそうあるものではありません (^^;)。というわけで、私の滞在中この罐が連日ロンビエン~ドンダン間の「M3/M4」列車牽引運用に入っており、非常に狙いやすかったことについて、思わず天に感謝せずにはいられないのでした……(^_^)。果たして、今度訪れる機会があるとしたら、その時にはこの超レア珍罐は現役でいてくれるのでしょうか……。
なおこの罐は、常にこの列車専属であるとは全く断言できませんので悪しからず。現在はイエンビエン機関区所属のようですので、ロンビエン橋~ザーラム界隈に来る他の列車を牽引する可能性はありそうですが、もし今後ハノイ以南の統一鉄道に転属すればロンビエン橋にはまず来ないものと思われますので、この記事の内容を鵜呑みにされないようお願い致します。そもそも故障してそれっきり離脱となるかも知れませんし……全ては運でしょうか (汗)。