地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

湖西雷雨地獄鉄 (2) 比叡山坂本ケーブル

2012-07-23 00:00:00 | 地方民鉄 (近畿)


 京都の街の北東に聳え、延暦寺が大伽藍を構えるだけでなく、新幹線や東海道線の車内からその姿が近づいて来ると「いよいよ京都が近いな」と思わせる点で関東民にもお馴染みの (?) 比叡山。そんな霊峰によじ登る日本最長のケーブルカーの起点・ケーブル坂本駅は、昨日アップしました通り、まさに聖域への入口に相応しく外観・内部ともに風格ある駅舎です。そして、自販機にて大型硬券の切符をゲットした後は (持ち帰り可能です) いよいよケーブルカーに乗り込みます♪ 車体は年始などの大量輸送に備えて大柄ですが、さすが京阪グループらしくそれなりにシックな雰囲気が漂うと思うのは私だけでしょうか? そしていよいよ発車ベルが! 平日の午後ということもあって、他の客は個人で参拝に来たおばさん、及び白装束の修行僧のみで、私を含め客は計3人というスカスカな状態で発車しました。
 まずは、終点・延暦寺の手前300mという至近にありながら、周りは全て鬱蒼と茂る原生林のみという秘境駅「もたて山」を目指します。 坂本ケーブルには他に、ケーブル坂本駅から300mの位置に「ほうらい丘」駅がありますが、この両駅で下車するためには乗車時に申告しなければならず、また両駅から乗車する場合には駅備え付けのインターホンで延暦寺駅に連絡しなければなりません。さもなくば、こんな誰も乗り降りしない秘境駅は断りもなく通過しまくりとなります (笑)。まぁ要するに、そんなイレギュラー過ぎる体験をしてみたくて途中下車するというわけです、はい (^^;;)。そして見方を変えれば、ほうらい丘・もたて山の両駅ほど、停まって頂くことに申し訳なさを感じる駅もそう多くないでしょう (笑)。



 全長2km、最大斜度333.3‰、所要11分 (途中停車すればもう少々プラス) という偉容を誇る坂本ケーブルは、その長さと険しさゆえにオソロシイのか……と思うとさにあらず。途中カーブやトンネルが随所に現れ、その都度見通しが遮られますので、例えば一直線の箱根登山ケーブルカーに乗ったときに感じるような凄まじい高度感による恐怖は全くありません (個人的に)。むしろ、ケーブルを支持する地上の滑車がカーブに合わせて思い切り傾けてあり、ケーブルが引張力余って突然滑車から外れたりしないのだろうか……という点で内心ヒヤヒヤ (^^;)。必ず乗り込む乗務員氏も、常に前方を凝視しながら滑車の状態に気を配っているように見えます。いっぽう周囲に眼をやれば、鬱蒼とした森、遥か下に岩を噛む谷川、そして琵琶湖の大展望が広がり、これは百聞は一見に如かずの素晴らしさ……。
 しかし楽しい気分はここまで。いよいよもたて山に到着し、さて「撮りケーブルカー」に興じるか!と思った矢先……目の前のもたて山駅に霧がかかり始めたという……(-_-;)。そして、木製の狭いホームに降り立つや否や、頭上でガシャーン!と雷鳴が轟き、やがてバシャバシャと雨粒が叩きつけ始めました……(@o@)。幸い、下山して来るケーブルカーを撮影した際には、一旦雨脚が弱まって霧の中をそろそろと下ってくる幻想的な光景を記録出来ましたが (1枚目)、余りにも暗く……EOS 5D MⅡを持参していなければ完全にお手上げ (-_-;;)。歌人・紀貫之の墓所へ向かう片道500mの山道など、いよいよ強まる一方の雷雨の中では行けるはずもなく……とにかく周囲での落雷がひどく、駅の低い屋根の下からは一歩も動けない状態となりました。まぁ個人的には山屋の心得がありますので、黙ってその場にとどまりやり過ごすしかないという諦観に達したわけですが、山に慣れていない人であれば、こんなところで猛烈な雷雨に見舞われたら絶対に小便チビるな……と。
 ともあれ、京都からほど近い究極の秘境駅・もたて山への初訪問&「撮りケーブルカー」は散々なものに終わり、ようやく延暦寺行のケーブルカーが到着したときには大いに安堵 (はっきりと雨粒が写っている2枚目の画像から、ヤバい雰囲気がお分かり頂けるかと存じます)。僅か300m先の延暦寺駅 (発車ベルの音も聞こえます。笑) まで登山道を歩くこともままならない状態だっただけに、坂本駅と同じく登録文化財に指定されている駅舎が見えてきたときには、まさに偉大なる衆生済度の大宮殿のように見えたのでした……(笑)。
 しかし駅から先、根本中堂へ向かう参道へは、凄まじい雨のため一歩も踏み出す気にはなりません。夕方からの用務を前に濡れ鼠になるわけには行かず……。というわけで、仏縁ゼロ! (滝汗) 坂本から乗った際に乗っていたおばさんが、途中まで前進しながらも凄まじい雨のため参拝を諦めて戻って来たとのことで、参道にはデカい山蛭がボタボタ落ちており、まさに足首に飛びかかってくる勢いだったとか……。やっぱヤブっぽい低山のベストシーズンは春と秋であり、もたて山での「撮りケーブルカー」&延暦寺参拝リベンジもそんな季節でなければならんなぁ、と思いつつ、最高に大正~昭和モダンな雰囲気の駅舎内を何枚かスナップして下りケーブルカーの客となったのでした。