東南アジア最大の都会、ジャカルタ。ここでは単に日本と蘭領東インドとの歴史的な行きがかりに由来して1067mmの軌道が敷かれているだけでなく、ここ10年以上の日本中古電車購入・譲渡ラッシュにより、周知の通り首都圏の電車の一大同窓会の観を呈しています。それはまさに、互いに政治的・経済的な結びつきの強化を求めている日本とインドネシアの関係の絢爛たる縮図でもあると言えましょう。
そんなジャカルタの最近の電車事情は、私自身が初めて訪問した4年前と比較すると、ほとんど隔世の感すら感じられるほど目まぐるしく変化しつつあり、毎年訪問することによって、そしてお世話になっている方々の雑誌・ブログ情報を丹念にチェックすることで、自分の脳内情報をフォローして参りました。しかし……今回の訪問は、ジャカルタの電車史上恐らく未来永劫にわたって一大画期として語り継がれることになるであろう巨大な変革の直後にあたり、私自身も大いに浦島太郎気分を味わわざるを得ませんでした。
その変化とはすなわち、自動改札の全面導入と、それに伴う運賃制度の乗車駅数比例化、ならびにエコノミー電車の完全廃止であります! 私自身、これまでの訪問を通じて痛感してきた猛烈な混雑と、何事もゆる~い雰囲気 (^^;) に鑑みて、果たしてそのようなことは可能なのだろうか?と半信半疑でしたが、実際に訪れてみると本当にその通りとなっており、一応全くの新状況に適応しながらも、内心大いなる驚きを隠せません (汗)。
しかし……今回は断食月明け=レバランの休暇期間中にあたり、近郊電車輸送が通勤客でパンクしていない状況だからこそ、とりあえず一連の大変革が機能しているようにも見えます。エコノミー電車の突然の全廃は7月下旬のことでしたが、この期間はまだ神聖なる断食月につき、乗客の皆様も騒いだり余計なエネルギーを使いたくなかったのでしょう。とはいえ今後、17日の独立記念日が過ぎ、地方出身者もジャカルタの街に戻り、学校や企業も完全に通常体制に戻ったとき、収容力がエコノミー電車よりも低い日本中古冷房車で果たして足りるのか、そして人の流れ方が悪い自動改札システムはパンクしないのか、今後約1年のうちに205系が大量投入されてもフルに運用できるほど線路容量や電力容量は足りるのか……等々、思いつく問題点はいくらでもあります (滝汗)。
それでもはっきりしているのは、エコノミー電車が本当に廃車回送され、あるいは運用を外れて荒廃が始まっているという事実です。そして、路線にもよりますが、来る電車はどれもこれも本当に東京を走っていた車両ばかり! その結果、これまで明らかにエコノミー電車の客であったような客層も、大幅にリーズナブルになった運賃制度に丸め込まれるかたちで、何のかの言って冷房車の客となっています。まぁ同時に、冷房電車の客層のガラが悪くなったという問題もありますが (表現がアレですみません→小田急江ノ島賎民のくせに人のこと言えた道理かよ? ^^;)、何はともあれ既に賽は投げられてしまったのです! 庶民も冷房電車に乗って普通に通勤通学できるというのは、ある意味で当然誇るべき経済発展の成果でもありましょう。というわけで、今回の訪問は、これから起こりうる可能性が高い一波乱を何となく予感しつつ、あるいは今後205系が大挙して投入されてからの雰囲気一変を想像しつつ、相変わらずの日本中古電車のカヲスを楽しみ、いっぽうでレバラン (断食月明け) 直後の連休お出かけ需要による大混雑にヘロヘロになるという点で、まさに嵐の前の風雲に巻き込まれるかのようなひとときとなったのでした。
そこで今後、今年のジャカルタ訪問における撮り鉄成果ならびに見聞の一端を備忘録的に記して参ります。いつ完結するのか全くナゾですが……(^_^;;)。
まず、毎度のことながら、線路内撮影をしまくっていることをお断りしておきます。……と申しますか、駅撮りが基本的にセキュリティ上の問題で不可となりましたので、鉄道用地内で無許可撮影をするしかないということで……(^^;)。但し、それは全て本来禁止されているものであり、沿線民も線路内を歩行しまくっていることからして事実上黙認されているに過ぎないことでもあります。現在のところ、カメラを構える私に点灯サービスで応えて下さる運転士の方はかなり多く、したがって「まぁ事実上大丈夫」と判断しておりますが、それはあくまで鉄道関係者の皆様のレールファンに対する御好意の現れに過ぎません。本来許可が必要な駅構内でササッと撮っていたらやはり注意を受けてしまった……という場合でも、多少の問答を経て「日本人だからまぁ良い」と放免してもらえたこともありますが、これは日本という国自体が持っている計り知れないブランド力の現れでもあります。しかし、それに甘えすぎ、あるいはそれを傷つけることは、日本国民のはしくれとして厳に慎むべきではあります。というわけで、もし当ブログの記事や、リンク頂いている方々のブログ記事を通じて現地を訪れてみたいという方がおられましたら、安全確保は完全に自己責任で常に注意を払い、安全輸送をめぐる鉄道関係者と日本人・インドネシア人レールファンとの信頼関係を壊さないようご協力をお願い申し上げます。とくに、これから列車が自分に向かってくる線路に立っている際、電車に背を向け続けない (=最大限の緊張感を保つ) ことが鉄則です。
なお、今回の訪問にあたりましては、今や現地情報の最有力ブログに堂々成長した『JABODETABEK COMMUTERS NEWS』のパクアン急行様に何かと大いにお世話になりました! また、パクアン急行様のご人脈で、デポック電車区訪問の便宜を図って下さいました技術者のS様には、本当に貴重な機会を与えて頂き心よりお礼申し上げます! ならびに、わざわざスラバヤからミニオフ会のためにお越し下さいました落花生。様には、ドゥリでの熱闘・タンゲラン線での涼みトーク、そして日本料理屋での昼からビール昼食などなど、ジャカルタの週末をご一緒させて頂きどうもありがとうございました! そして、現地の若く有能なレールファンであるA君とK君には、楽しいひとときをどうもありがとうございました。Terima Kashih!