地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

第三ヤンゴン熱鉄記 (20) なつかしい未知の国

2015-06-29 00:00:00 | ミャンマーの鉄道


 先日、自宅の本棚を整理していたところ、久しぶりに「ああそうだ、こんなものがあった!」ということで、ある本をまじまじと眺めてしまいました。それは……『地球の歩き方・ビルマ編(90~91年版)』! 1988年の民主化運動と軍事クーデタの記憶生々しい頃のもので、国号はまだビルマ・Burmaの方が一般的であったのみならず、誌面そのものも今とは違ってバックパッカーの購入のみを念頭に置いたもので、青く塗られた縁といい、最初のカラー口絵を除いて全て2色刷のショボい紙であったのが懐かしい……。そして、紙幣が90ks、45ks……と無茶苦茶な刻みであったのも (苦笑。今でも土産物屋で見かけることが出来ますが)。最も驚くのは、ヤンゴン環状線が一周2時間であったことですが (現在は3時間)、ネーウィン政権 (ビルマ式社会主義) 時代の方が1988年以後の軍事政権時代よりもマシな線路状態だったのでしょう。



 そして、バックパッカー専用&御用達であったことからして、表紙をはじめあちこちに、「ボクら」という主語とともに、実に青臭いながらも好奇心をかき立てずにはいられないキャッチフレーズが添えられています(それは他の国の版でも全く同じ。中国編とかインド編とか、いま改めて読み返してみればこれ自体、70~80年代の時代精神[=バブル・クリスタル]に対するある種の抵抗・反動のカタマリです……)。それはずばり「なつかしい未知・未来」……。そのインパクトは、買った当時まだ19歳だった私の心を鷲づかみにするに十分なものがありました
 他の国についてはその後、バックパッカー用だった頃の『地球の歩き方』の煽り文句から受ける印象とは全然変わってしまった国も少なくありません。しかし思うに、ビルマ=ミャンマーは2013年に初めてヤンゴン界隈を訪れても、その後毎年1回訪れても、全く「なつかしい未知・未来」という印象のまま変わりません。今のところは……。たとえクルマが激増し、冷房RBEが走り始めても……。80年代まで、この国を訪れた日本人は、時間が止まったかのようで余りにも不便な環境であったにもかかわらず、ほぼ例外なく「ビルキチ (ビルマキチガイ)・ビルメロ (ビルマメロメロ)」になったといわれますし、恐らくここ2~3年の間に一気に訪れはじめた日本人もまた同様なのではないかと思います。
 さて……その理由は一体何故なのかと思いますが、考えてもきりがありませんので、とりあえず経済発展が今後急速に進んでも、「なつかしい未知・未来」な雰囲気はいつまでも残って欲しいものです。
 というわけで今回は、西ドイツ製であることが発覚したLBTX900形をスナップ写真風に撮ってみた画像をアップしてみましたが、次回からは再び客車各論 (?) に戻る……と思います (^^;






 大学に入って間もない頃、こうやって買ってみて「行きたい……」と熱望してはみたものの、軍事政権の下で自由に旅行できないということもあって、結局正式な初訪問は約四半世紀後となりにけり……(滝汗)。しかし、2013年に眺めた風景は、辛うじて古い時代の最後という雰囲気で、嗚呼間に合った……と思ったのも確かです。2014年にはもう、広告ラッピングやら、新規に日本から輸入した中古車が激増してしまいましたから。