小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『不可能楽園<蒼色館>』倉阪鬼一郎

2013年10月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
若くして引退しそのまま隠棲した名女優・美里織絵が没した。
蒼色館で告別式が営まれる中、織絵の屋敷に強盗が押し入り、執事と家政婦を刺殺。さらに織絵の妹・浪江の孫を誘拐した。
しかし容疑のかかる関係者にはことごとく鉄壁のアリバイがあった。

~感想~
毎年9月のお楽しみ、倉阪バカミスが降臨。
これまでは全編に張りめぐらされた壮絶なまでの言葉遊びで読者の度肝を抜いたが、今年の遊びは少し控えめ。他の作家ならばよくぞここまでと思うだろうが、変態作家(褒め言葉)のクラニーならば今年は楽をしたなと思われてしまうのは少々気の毒ではあるが。
だが一方で今年は本編の事件自体がわりとしっかりしていて、いかにもバカミス然とした脱力の、しかし意外性あふれるトリックが立て続けに仕掛けられる。それこそバカミスとして成立させるには文字遊びなど必要としないくらいで、今回の文字遊びは本編の事件自体とはさほど密接に絡まない、ボーナストラックといった印象が強い。
またカバー見返しであっさり明言している「上小野田警部の最後の舞台」では警部が気の毒すぎるくらい気の毒なことになっているのでそちらも必見。
一冊で二度も三度も美味しい、さすがバカミス界の紅白の小林幸子(自称)であった。


12.9
評価:★★★☆ 7
コメント