

~あらすじ~
瀬戸内海の興居島に6体もの身元不明の死体が流れ着く――。
奇妙な相談を受けた御手洗潔は、死体の出どころが福山の鞆だと見抜き現地に飛ぶ。
新興宗教に侵食されつつある街で起こるいくつもの殺人の謎。
事件の鍵を握るのは、かつて村上水軍が開発した黒船対策の新兵器・星籠なのか。
~感想~
「最後の一球」以来、実に7年ぶりの御手洗長編は、厳密に言わなくてもまるで本格ミステリではなく、こちらの期待したものとは違った。
見かけよりも文字数が相当少ないものの上下巻を読ませるリーダビリティはさすがながら、ミステリ的に美味しい要素はほぼ皆無。2時間ドラマさながらの筋書きに歴史ロマンを絡めつつも、わかりきった事件の様相をわざわざ犯人視点から書き直し、さほど話に発展もない第9章を筆頭に、物語に裏切りが少ないのも拍子抜け。
筆もいつになく淡白で、もう一人の主人公とも呼ぶべき語り手の物語は上巻だけで終わり、女優の悲劇も尻すぼみ。星籠の謎は早々に解かれ、これまでなら二流魂や市井の意地を滔々と描いただろう特攻シーンも御手洗視点でさらっと流されてしまい、盛り上がりに欠けた。
その一方で何かとBL目線で見られる御手洗や、バスの荒い運転に「頼むよ~(原文ママ)」とおびえる御手洗、行く先々で主要女性キャラに罵られる御手洗と、腐向けのサービスは満点。
石岡君との、そして日本最後の事件が「御手洗潔の事件簿~漂流死体が語る村上水軍の秘密兵器。悲劇の女優の呪いが招くのは瀬戸内海の幻獣・星籠か~」といったコレジャナイロボになったのは非常に残念である。
上巻 13.10.10
下巻 13.10.21
評価:★★☆ 5