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ミステリ感想-『シュークリーム・パニック 生チョコレート』倉知淳

2013年10月09日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
「現金強奪作戦!(但し現地集合)」……捨てられた馬券を拾い集めていた僕に、怪しいおっさんは銀行強盗の計画を持ちかけた。借金に追われ社会を恨んでいた僕は1億円の分け前につられて加担するが、計画は但し現地集合であった。
「強運の男」……静かなバーで隣りに座った紳士然とした男が勝負を持ちかけてきた。勝つごとに男が提示する賞品はエスカレートしていくが、私は負けてもそれまでに受け取った賞品を返すだけでいいと言う。はたして男の目的は?
「夏の終わりと僕らの影と」……高二の夏の思い出づくりに自主制作映画の撮影に踏み切った僕ら。だがクランクアップの直後に主演女優が消失した?


~感想~
これは駄目だ。
尋常ではない寡作で知られる作者が何をどうしたのか二ヶ月連続刊行に踏み切った短編集の第一弾……なのだが、この質の低さはどうしたことか。
かの「猫丸先輩シリーズ」を「現代の亜愛一郎シリーズ」と評した身から言わせてもらえば、この程度の作品は倉知淳ならあくび混じりに書けたはずだと断言できる。
まず「現金強奪作戦!(但し現地集合)」。こんなものは亜愛一郎シリーズを引き合いに出した泡坂妻夫を筆頭に語り尽くされた、手垢にまみれた細工に過ぎない。前半のうちに2つや3つの伏線を張ったからといってそれがどうしたのだ。先人の着地点に追いついて、そこから何も生み出せずにありきたりの結末を付けただけではないか。
次いで「強運の男」は問題外。何一つとして驚きがない。もともと個人的にリドル・ストーリーは大嫌いなのだが、それにしても男が勝負を仕掛けた動機にしろ、裏に潜む思惑にしろ結末にしろ陳腐という表現以外に何も思いつかない。完結と同時に「あぁん?」とDQNじみた嘆声が漏れるのを禁じ得なかった。
「夏の終わりと僕らの影と」は悪くない。だがいかんせん長すぎる。撮影のエピソードや語り手の独白でページ数を浪費しながら、推理パートに移ると途端に尺が足りなくなって、見開きが文字で埋め尽くされたのには失笑するしかない。伏線は豊富だがこの程度の短編を語るならば、昔は半分の尺で足りたろうにと思えてならない。
あと余談として表紙の萌えキャラは登場人物の誰にも特徴が当てはまらないんだが、あれはいったい誰なのだ?

これでは来月刊行の短編集第二弾にも不安しか感じない。どうした倉知淳。あなたの実力はこんなものではないはずだ。


13.10.9
評価:★☆ 3
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