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ミステリ感想-『レタス・フライ』森博嗣

2016年08月13日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
二人の女性から逃げるように海外出張した私は、異国の地で同僚だった女性と再開し、奇妙な事件に遭遇する……ラジオの似合う夜
山吹早月の実家である白刀島の旅館へ遊びに来た西之園萌絵、佐々木睦子、加部谷、海月ら。島に一つきりの診療所には数多くの奇怪な話がささやかれていて……刀之津診療所の怪

他、短編と掌編を7編収録。


~感想~
ミステリ馬鹿には価値がわからないし乙一の100倍は難解な7編は置いといて、最初と最後に配されたミステリ短編について。
まず「ラジオの似合う夜」は、名前こそ最後まで出てこないがシリーズファンなら誰だかわかる面々による小咄集で、これがすげえやばい。
「Τ(タウ)になるまで待って」のトリックも相当やばかったが、それをも凌駕する代物で、メインではなく単なる余談として語られるので遠慮なくネタバレすると「単独犯だったはずの犯行現場に残された、正体不明の指紋の持ち主は誰か?」という謎の答えが「犯人は三本腕だった」なのだ。
え。大丈夫なのか森博嗣と怒るより呆れるより先に心配になった。もう一つの余談も「伝説となった事件」と煽っておきながら霞流一の二番煎じだったし。

しかし掉尾を飾る「刀之津診療所の怪」は、シリーズをここまで追ってきたファンに向けた最高のプレゼントと言って過言ではない内容で、これだから森作品を読むのを放棄できないのだと、Gシリーズを12年間放置してきた身ながら唸りたくなった。
この前の短編集「虚空の逆マトリクス」でも最後に熱心なシリーズファンならば必読の「いつ入れ替わった?」を持って来たことといい、実に心憎い演出である。


16.8.13
評価:★★☆ 5
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