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ミステリ感想-『ε(イプシロン)に誓って』森博嗣

2016年08月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
山吹早月と加部谷恵美の乗った深夜バスが何者かに乗っ取られた。
バスには「εに誓って」を名乗る集団が乗っており、バスジャック犯は都内の各地に爆弾を仕掛けたと言う。


~感想~
トリック云々よりも、森博嗣にまだこんな込み入ったトリックを仕掛ける意志があったことに驚かされた。
全盛期と比較しても見劣りしない大掛かりなトリックで、言われてみれば確かに納得するあからさまに不自然な伏線や、意表をつく展開は素直に賞賛できる。
まったく前作「Τ(タウ)になるまで待って」でミステリ史上に残るような最低の密室トリックを放っておきながら、しれっとこんなトリックを提出してくるのだから始末が悪い。前作は手を抜いてましたと白状したようなものではないか。

ただでさえ真賀田四季が絡んでくるとミステリ的に面白くなったことが(デビュー作を除き)一度もないのに、真賀田四季の姿が見え隠れするこのシリーズも四作目を過ぎて、もうパターンがだいたい見えてしまい、今後も意外性を見せることができるのか否か。
たぶん今の森博嗣に読者の意表をつきたいとかそんな意志は毛頭ないと思うが、トリックも面白ければ儲けものと思ってこの先も読んで行きたい。


16.8.16
評価:★★★ 6
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