小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『大癋見警部の事件簿』深水黎一郎

2016年11月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
無能で傍若無人で傲慢、だが検挙率だけは100%の大癋見(おおべしみ)警部。
密室、レッドヘリング、叙述トリック、歴史ミステリ……彼の捜査する事件は本格魂にあふれつつも、どこかずれている物ばかりだった。

15年本格ミステリ大賞評論・研究部門候補


~感想~
要するに東野圭吾「名探偵の掟」等でおなじみのアレの深水黎一郎版で、本格ミステリでおなじみのガジェットを、徹底的に笑い飛ばした短編集である。
JAROに何か言われそうなほど大げさに賞賛する文庫版の解説はどうかと思うし、ひと目でわかるような馬鹿トリックから、ネットの面白一言で見覚えのあるネタ、さらには清涼院流水の劣化コピーも散見されるが、例に挙げた「名探偵の掟」よりはるかに読み口は軽く、よりはっちゃけて馬鹿馬鹿しい筆致で、個人的にはこちらの方が好みである。
またその自己批判的精神を評価でもされてしまったのか「本格ミステリ大賞」のよりによって「評論・研究部門」にノミネートされたものの、商業的には損をしてしまったのではと余計な心配をしてしまう。
個人的なことをもう一度言うと、この系統で最も優れた作品は「33分探偵」だと思うのだがなあ。


16.11.7
評価:★★☆ 5
コメント