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ミステリ感想-『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』歌野晶午

2016年11月16日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
公私ともにパートナーだった男から5年ぶりに届いたメールは、作家の私に限界を知らせ、恐怖をもたらす…「椅子?人間!」
スマホに映る女性と旅する男と知り合う。しかし有名アイドルの彼女は確か…「スマホと旅する男」
偶然出会った生意気な少年とともに事件に遭遇。現場は二人の監視下による密室状態にあり…「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」
認知症の義父に悩まされる男は「お勢登場」をなぞるような事態に出くわす…「「お勢登場」を読んだ男」
「赤い部屋」をアレンジした舞台の最後に本物の銃弾が発射された?…「赤い部屋はいかにリフォームされたか」
女性を欲望の対象としか見られないが本心を隠し教職にある男。歪んだ欲望は雑貨屋の美しい店主に向かい…「陰獣幻戯」
服役を終えた女は第二の人生のため老齢の男と結婚。獄中で聞いたという奇妙なおまじないに彼は興味を抱き…「人でなしの恋からはじまる物語」


~感想~
江戸川乱歩の傑作短編を題材に採った、乱歩リスペクトあふれる短編集。
原作の予備知識があればより楽しめ、若干のネタバレも含むためやはり元ネタを先に読んでおくべきだが、通り一遍の知識があればさほど問題ない。
しかし内容は乱歩リスペクトとアレンジに注力しすぎて、個人的にはあまり楽しめなかった。

というのも「椅子?人間!」にしろ「赤い部屋はいかにリフォームされたか」や「陰獣幻戯」にしろ、トリック自体はきわめてありきたりなもので、ただ乱歩短編に別解を付けただけに思えてならず、急にガチ暗号を放り込んでくる「人でなしの恋からはじまる物語」は笑ったが、表題作や「スマホと旅する男」は悪い意味での21世紀本格で、「「お勢登場」を読んだ男」は計画があまりに杜撰すぎる。と、欠点ばかりが目に付いてしまう。
いずれも一定の質は保っているものの、歌野晶午と乱歩を組み合わせた相乗効果はほとんど無く、1×1=1.2になったくらいの(あくまで個人的には)見るべきものの少ない短編集であった。


16.11.12
評価:★★☆ 5
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