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ゲーム感想-『レイジングループ』

2019年08月24日 | ゲーム
あらすじ
失恋のショックから旅に出た房石陽明は、山道で迷い崖から滑落。
女子大生の芹沢千枝実に助けられ、彼女の住む奇妙な風習の残る寒村に招かれる。
そして夜、霧が立ち込めた村に人狼が現れる。
村人たちは密かに紛れ込んだ人狼を倒すため、異能を用い議論を交わす。
そして陽明は、死ぬと道に迷った所まで時間が巻き戻ることに気づき―。


1.概要
いわゆるサウンドノベルで、人狼ゲームを潔いほどそのまま流用した設定がまず特色の一つ。
もう一つは主人公の房石陽明の特性で、彼は死ぬたびに記憶を保持したまま物語の冒頭に戻される。
つまりプレイヤーの視点をそのままシステムに持ち込んだもので、失敗した記憶をもとに危機を回避していくのだが、ここが面白いところでプレイヤーの選択の余地はほとんどない。死んで手掛かりを得てやり直していく陽明の苦心惨憺ぶりを見るだけの一本道と言っても良い。なんせ「誰が人狼か」を選ぶ選択肢が出ることすら稀である。
というか危機を回避するための選択肢をいちいち設けて、それを総当りさせていたら膨大かつ煩雑すぎて間違いなくプレイヤーが死ぬので、これが正解であろう。
もっともそのためには「一本道なのに退屈させないほど話自体が面白いこと」が絶対条件である。そしてこれがもうとんでもなく面白いのだ。
これをセール中のPSプラス会員価格2000円以下で売って本当に良いの? もうちょっと払うよ?


2.ストーリー
「人狼+ひぐらし+京極堂+メガテン+TRICK+横溝正史」とおすすめされ購入したのだがマジだった。一つか二つは足りない気がしても話が進むと全部出てくるので安心して欲しい。なんならそこに「+雨格子の館+街」も足してよい。
さらに度肝を抜かれたのがクリア後に解禁される「暴露モード」である。ここでは本編では語られなかった心情やネタバレ解説、説明不足だった部分の補足や、人狼ゲーム中のそれぞれの戦術までもが明かされる。本編にそのまま暴露パートが追加される恐るべき分量で、必読である。


3.キャラ
全員ほんのり棒読みで、特に主人公の陽明が一番しゃべる癖に一番棒読みなのが、本作最大のネックだろう。
なんせ有名な声優が一人もいない。というか経費節減のためか全員スクール生、つまり素人らしい。
陽明も性格からして棒読みはハマっているのだが、これだけ全員が全員上手くないのは逆にすごい。
どうしても我慢できなければオプションで一人ひとり音声のオン・オフを選べるので活用して欲しい。自分は陽明だけギブアップした。
棒読みを除けばキャラの立った個性派揃いであり、しかもほぼ全員が一見してわからない裏の顔を持っているので何度となく驚かされるだろう。

ストーリーとキャラの面白さはネタバレ無しでは全く語れないのでページを設けた。
興味のある方は必ず本編クリア後に読んでいただきたい。
超キモいし6千文字あるけど。 → レイジングループネタバレ感想


4.人狼
人狼ゲームを役職の名前だけ変えた設定で、もう潔いほど丸パク…そのまんま。
村内での立場やキャラごとの背景と、人狼ゲームでの役職が複雑に絡まった論理・心理戦も本作の魅力である。
そのため人狼ゲームでのセオリーが有効とは限らないし、戦いはゲーム内だけで完結しない。そのうえ主人公は「死に戻り」の能力まで持っている。
この設定でできることの全てをやり尽くしたといって過言ではなく、少なくとも今後これを超える人狼ゲーム物はまず出ないだろうし、人狼で何か書こうと思っていた後続の作家を全滅させてしまったことは疑いない。

総じて、人狼+ひぐらし+京極堂+メガテン+TRICK+横溝正史(+雨格子の館+街)のいいとこ取りの、歴史的傑作ADVである。羅列した要素のいくつかに興味があるならぜひプレイして欲しい。本当にすごいから。


★★★★★★★☆ 15
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